Esclamazione improvvisa prematura


六道骸は困惑していた。
現在の状況に盛大に困っていた。
15年という月日の中で初めて自分以外の人間に対してどうして良いのか分からない感情を覚え、やっとの事で腹を括ってその感情は恋と呼ばれるものであることを認め、地道な片思い活動を得て、同情でも構わないから自分の方を見て欲しいとなりふり構わずアタックを繰り返した末ようやく「恋人」というポジションを得た相手から「そう言えば誕生日なんだよね?何が欲しい?」とさらっと当日に聞かれ、ポロッとこぼしてしまった己の言葉に。

「誕生日プレゼントに何が欲しい?君に決まってるじゃないですか?」

本音であることは否定しない。
骸だって色々と特殊な生い立ちを抜かせば普通の至って健全な青少年だ。
恋人が出来ればステップアップを望む心は少なからずある。
しかし、この場合は相手が悪かった。

「え、あ、オレ…?」

見る人を魅了する笑顔を骸に向けていた幼さの残る恋人はキョトンとした表情を浮かべ首を傾げた数秒後、言葉の真意にたどり着き顔を真っ赤に染めた。

「え、あ、え、それって……」
「……そりゃ、僕も健全な男ですから好きな人は抱きたいと思いますよ」

それが例え男同士であったとしても同じです。

一度漏らした言葉は取り戻す事が出来ない。
腹を括った骸はあっさりと本音を吐き出した。
その言葉に骸の恋人、沢田綱吉、は高熱が出ているのではないだろうかと心配になるほど顔を赤くした。

「別に自分の欲望を一方的に押しつけて君を困らせたい訳じゃありませんから、今のは忘れてください」

困った綱吉を前にあっさりと前言撤回を申し出た骸はそのまま綱吉が「だよな!」と頷くものだと思っていた。
しかし綱吉の反応は違った。

「骸が…骸が本当に欲しいなら、いいよ」

いつもの弱気なダメツナの様子とは一転し、仲間を守る時に見せる強い意志を感じる目で綱吉は骸を凝視する。
何かを決意した際に見せる瞳、だ。

「うん。誕生日プレゼントにオレ…なんかで良かったらあげる」
「君が欲しいです!」

思わず即答した骸に綱吉は緊張の糸が切れたのかほにゃっと微笑んだ。


*****


「綱吉くん。最後にもう一度お聞きします」
「う、うん」

数分後、ベッドの上に移動した二人は正座をして見つめ合っていた。
二人の間に異様な緊張が走る。

「本当にいいんですか?今ならまだ間に合いますよ?」
「男に二言は、ない」
「嫌だと泣きわめかれても、一度初めてしまった後止める気は僕にはありませんよ?」
「しつこいな!あげるって言ってるだろ!」
「では」

ありがたくプレゼント、いただきますね。
骸は綱吉の耳元でそう囁くとそのままトンッと綱吉を後方に押し倒す。
ボフンという柔らかい音と共に綱吉の身体はベッドに沈み込む。
綱吉が視線上げると骸の端正な顔が優しい表情を浮かべ綱吉を見下ろしていた。

「綱吉くん、好きです」
「うん」
「今までで一番嬉しいプレゼント、です」
「……うん」
「僕の恋人になってくださって、ありがとうございます」
「………うん」

言葉の合間合間に骸はそっと綱吉の髪、おでこ、鼻の頭、頬と唇を降らす。
綱吉はこそばゆいのか身をよじる。

「綱吉くん、愛してます」

綱吉の瞳を見つめながら骸はそう言うと唇をそっと重ねた。
角度を変えながら何度もチュッチュッと触れてくる骸の唇は徐々に熱を帯びて熱くなる。
何度目かのキスの後、骸の舌が綱吉の唇をぺろっと舐めた。
初めての感覚に驚いた綱吉の唇が緩むとスルッと骸の舌が腔内に侵入する。

「んっ」

無意識に漏れる綱吉の声に骸は興奮し、執拗に綱吉の腔内を舌で蹂躙する。
歯列を丁寧になぞり、舌に舌を絡め、くちゅくちゅと二人の唾液を混ぜ合わせる。
いつもの軽いキスではなく、その先を意識したそれに綱吉は食べられてしまうのではないかという恐怖を覚え、卑猥な音に耳を犯され、意識が混濁する。
綱吉の目が徐々にとろんとするのに気をよくした骸は更に深く舌を絡める。
静かな部屋に卑猥な水音だけが響き渡った。
最後に唇に優しくキスをすると骸は一度唇を離した。

「後悔、していませんか?」

上がる息を押さえながら、綱吉を見下ろしながら骸は問いかける。
初めてのいわゆる大人のキス体験に翻弄され意識が朦朧としている綱吉は、しかし霞む意識の中はっきりと頷いた。

「うん、オレ……こうかい、してない……」

綱吉を見下ろす骸の瞳に欲の色がにじむ。
普段全く見せない骸の人間らしい色が浮かんだ事に綱吉は知らず笑顔を浮かべた。

「オレ、ちゃんとむくろのことすきだよ?」

焦点の合わない瞳で骸を見上げると手を伸ばして自分とは違い肉のついていないシャープな頬をそっと撫でた。
そしてもう一度ニコッと笑う。

「だからそんな辛そうな顔しないで?」
「つなよし、くん」

綱吉の名前を呼ぶと骸は再び唇を塞ぎ、片手でシャツのボタンを器用に一つまた一つと外す。
そして開いた服の隙間からそっと手を這わすと膨らみの一切無い胸をなで回し、興奮のため少し固くなっている突起をキュッと摘んだ。

「んっ…!」

思わず綱吉が漏らした声に満足そうに頷くと、片手はそのまま突起を優しく撫でたり摘んだりを繰り返す。
しばらくそうした後、空いているもう一方の手を下肢に移動させるとやはり器用にベルトを外しファスナーを下ろし手を差し入れた。

「えっ」

キュッと若干硬さを帯びだしている性器を握られ綱吉は驚きの声を上げた。
綱吉の驚きを無視して、骸はそのまま性器をさわさわと緩く触り続ける。
いつまでも続く微妙な刺激に徐々に物足りなさを覚え始めた綱吉は無意識のうちに小さく腰を動かす。
本人も気付かない程度のその動きを敏感に察知した骸はニッと笑う。

「綱吉くんはえっちなんですね」
「ちがっ」
「腰、揺れてますよ?」

気持ちいいんですね。
そう耳元で囁いた次の瞬間、綱吉の下肢から邪魔なものを全て脱がせてしまう。
突如外気に晒された綱吉は身体をブルッと震わせた。
そして次の瞬間別の意味合いで震えが走った。

「えっ、あっ、んっ…!」

先ほどまで綱吉の耳元に寄せられていた骸の綺麗な顔が今は綱吉の下半身に埋められている。
薄い唇を開き綱吉の性器をパクッと銜えていた。
くちゅっと骸の腔内で水音が響く。
自慰もろくにしたことのない綱吉にとって強すぎる快楽はすぐに我慢の限界を知らせる。
腔内で性器を擦り舐められる実際の快感と、思わず見てしまい脳裏に焼き付いた己の性器を銜える骸という視界的快感に綱吉の頭は飽和状態になりただただ声にならない声を上げ続ける。

「あっ……あんっ…いや、むくろ…いっちゃ、あっ……」
「イっていいですよ」

綱吉の声が上がれば上がるほど骸の吸い上げる力は強くなる。
口から一度取出すと、裏筋を舐め上げぱくぱくと痙攣する穴に無理矢理舌をねじ込み、じゅっと卑猥な音を立てて綱吉の先走りを一気に吸い上げた。

「うっ……あ、あっあ”ーっ!!!」

嬌声をあげると綱吉は白濁を吐き出す。
骸は戸惑うことなくそれを嚥下した。
コクンと骸ののど仏がなまめかしく動く。

「お、ま、……なにやってるんだよ!」
「ごちそう様です。今度はこちらをいただきますね?」

乱れる息で骸を叱咤する綱吉に悪びれることなくしれっと骸は答えると、今度は後孔に綱吉の先走りを絡めた指を這わせる。

「え、本当にそこは、ダメ!いや!汚い!!」
「汚くありません。それに……ここを使うんですからほぐさないとダメですよね?」

いけしゃあしゃあと言い切る骸に、綱吉は足をばたばたさせる事で抵抗を計るが体格の差が災いし、簡単に抑えつけられてしまう。

「きちんと解さないと辛いのは君ですよ?」
「でも、汚いから、やだ!」
「汚くありません」

キッパリと言い切るとクルッと後孔の周辺をなぞりツプッと遠慮なく第一関節まで指を差し入れる。

「ひっ…」
「力を抜いてください…といっても無理ですよね」

最初から返答を期待していない口調でそう言うとあっさり指を抜き下肢へと再度顔を近づけると、そこに舌を差し入れた。

「やだ!やだ!!むくろ、やめて!」

臀部へのぬるっとした感触に驚いた綱吉は声をあげ、再度暴れようとするが先ほど拘束されたままのため下肢を動かすことは出来ない。
綱吉の言葉を一切無視した骸はそのまま窄まりに舌をねじ込んで、内側の粘膜に入念に舌を這わす。
くちゅくちゅという音と綱吉の荒い呼吸だけが部屋に響く。
耐えきれなくなった綱吉はその時ようやく自由になる両手に気付き、力の入らない手で骸の頭を押し返した。

「あっ、ほんとに、だめ…いや……だ……」
「嫌、ですか?」

言いながら顔を上げた骸の薄い唇からツッと伸びた銀色の糸がプツンと切れるのを目にした綱吉は思わず視線を逸らした。
綱吉の反応を見ていた骸は色々な粘液で光る唇と顎を手の甲で拭い、息を整えるため深呼吸を数度繰り返す。

「最初に、一度始めたらもう止めてあげられないと僕は言いましたよね?」
「……うん」
「だったら覚悟を決めて、ください。僕も、限界なんです」

綱吉はハッと息を飲み、逸らした視線を戻した。

「余裕がなくてすみません…本当に嫌なのであれば…止めます、ので今言ってください」

真剣に自分を見つめる骸の瞳に自分の決めた覚悟を思い出した綱吉は恐る恐る、しかししっかりと頷く。
綱吉の肯定の仕草に、骸の緊張が目に見えて氷塊した。

「よかったです…」

ぽつんと呟いた言葉に綱吉の胸はキュッとなる。
目の前の骸が愛しくて仕方なくなった綱吉は、この行為が始まる前にしたように骸へと腕を伸ばし今度は後頭部に両腕を回すと自分の方へと引き寄せ、形の良い頭と奇妙な房をまとめて抱きしめる。

「自分で言っておいてごめんな…こ、こんなに恥ずかしいとは思わなかったから……」

ギザギザの分け目に顔を埋めながらもごもごと言い訳を吐く綱吉の胸元で骸がクフッと笑う。
その体勢のまま骸は胸の突起に舌を這わせ、指を再度下肢へと伸ばす。
既にある程度解されていた後孔はすんなりと骸の指を受け入れ水音を立てる。
ピクッと綱吉は身体を震わせるが抵抗の言葉は決して出さない。

「んっ……う、んっ……あっ」

指への抵抗が少ない事を確認すると骸は指をもう1本増やした。
一瞬苦しそうに眉を寄せるが拒絶はせず、むしろ先ほどよりも漏れる声に色がつく綱吉に骸の気持ちは昂ぶる。
卑猥な音を立てながらしつこくかき回すととある一点に触れた瞬間綱吉の身体が顕著に強張った。

「あぁっ!!!!」
「ここ、ですか」

嬉しそうに微笑み胸から顔を上げるとそのまま舌で柔らかな腹部をなぞりながら下肢へと移動していき、性器を舐め上げ腔内へ収める。
骸の与える過剰な刺激に翻弄される綱吉はその事に気付く余裕も無く、身体を撓らせ声を上げ続ける。
いつの間にか指は3本に増えている。

「むくろ、も、ほんとに、だめっ!」
「すごいですね…もう3本も入ってますよ」
「あっ!も、ほんとうに…だめ、いくっ…!」

綱吉の言葉に限界が近いと感じた、骸は見つけ出した前立腺を強く引っ掻いた。

「あーーーっ!!!」

一際大きな嬌声をあげ、背中を撓らせ綱吉は2度目の絶頂を迎えた。
初めて体験する後ろで感じる刺激の強すぎる快楽に綱吉は荒い呼吸を繰り返す。
綱吉はいつまでも整う事のない乱れた呼吸のまま、焦点の定まらない瞳でぼんやりと見つめ、無意識に言った。

「ん……はぁ……むくろ、もう…」

熱を孕んだ上擦った声で綱吉が骸の名前を呼ぶと骸は限界とばかりにファスナーを下げ怒張した性器を取出す。
そしてドロドロに溶けた綱吉の後孔に熱く昂ぶるそれを押しつけた。

「つなよしくん…」

骸は荒い息の隙間から擦れた声で綱吉の耳元でそう囁くとぐいっと腰をグラインドさせる。
綱吉は自分に訪れるであろう激痛を想像し、思わず瞳をギュッと閉ざし身構えるがその衝撃はいつまで経っても訪れない。
その疑問と共に押しつけられた後孔の辺りにドロッとした生暖かさを感じ、そっと目を開くと綺麗な顔に恥ずかしそうな困ったような、とにかく見たこともないような情けない表情を浮かべた骸が綱吉を見下ろしていた。

「むくろ…?」
「み、見ないでください!」
「?」

綱吉が凝視すると骸はその視線に耐えられないとばかりに両手で顔を覆って全てを隠してしまう。

「……笑うなら笑えばいい」
「なにが?」
「……本当に、分からないのですか?」
「う、うん……」

突然快楽の頂点で放置されてしまった綱吉は燻る熱をどこに向けて解放して良いのか分からずもじもじと身体を動かしながら答える。
そして顔を覆った両手からそろっと頭を上げた骸を縋るようにジッと見つめる。

「君がお子様で本当に良かったです…」
「は!?なんだよ、それ!」
「経験豊かでなくて安心した、ということです」
「確かにオマエは経験いっぱいあるかもしれないけどさ!」
「いえ、初めてです」
「へ?」
「正真正銘、僕も君と同じ童貞、ですよ」
「え、……えぇぇぇぇぇ!?」
「……そんなに驚く事ですか?」

思わず驚きのあまり飛び起きた綱吉に骸は眉を顰める。
綱吉は目を見開いて、声を張り上げた。

「驚くに決まってるだろ!なんで初めてであんなに手慣れて……ん?」

起き上がった拍子にシーツと触れ合った肌がぬるっと滑りを帯びており不思議に思った綱吉はそっと自分の尻に指を這わす。
すると指に白濁の粘液が付着した。

「え、あれ、これって」
「……笑えばいい」

至極機嫌の悪い、拗ねているだけとも言える、骸の様子と自分の指の付着物とを交互に見ていた綱吉は一つの可能性にようやく行き着いた。

「もしかして骸……イッちゃったの?」

二人の間に微妙な空気が流れる。
その空気を壊したのは綱吉だった。

「ははははは」
「ほ、本当に笑うな!」
「だって、骸が」

綱吉は呼吸を整えるためにいったんそこで言葉を切る。

「あの六道骸がオレと同じように緊張して、気持ち良くなってくれて、我慢出来なかったのかと思うとなんか嬉しくて」

綱吉は屈託のない笑顔を浮かべ、楽しそうに、嬉しそうに言うので骸は面食らう。

「骸、オレ、オマエの事好きだよ」
「…綱吉くん」
「いつも完璧に見えるオマエもオレと同じなのかなぁってなんか嬉しくなっちゃった」
「……僕の男のプライドはボロボロですよ」

萎えた性器を晒したまま真面目に言葉を交わすというシュールな状態に気付いた二人は、ハッと息を飲み次の瞬間何がそんなにおかしいのかという勢いで笑い出す。

「骸格好悪い〜」
「君の格好だって相当情けないですよ」

クスクスと笑いながらお互いの悪口を言い、そのままどちらからともなく顔を寄せちゅっと唇を触合わせる。
ぶち壊れたムードは戻って来ない。
萎えた性器もそのままだ。
しかし二人は幸せそうにちゅっちゅっと軽いキスを交わす。

「次こそは、頑張ってな」
「……その言葉、後悔させてあげますよ」

そしてちゅっと再度唇を重ねる。

「骸、誕生日おめでとう」

綱吉の言葉に骸は今まで見せた事のない穏やかな笑みを浮かべ、無言で綱吉の唇を再度塞いだ。


―Buon compleanno ! ―

(2010/10/1)
(初出2010/6/9)
四方田屋さんの骸誕生日企画にて掲載していただいた骸ツナ18禁でした。企画参加させていただけて楽しかった!!