tactical front


「ねぇ、君、邪魔なんだけど」
「ヒバリさんこそ、邪魔です」

背中合わせて立つ二人は周囲に気を向けながら冷静に言葉を交わす。
周囲では銃撃戦が繰り広げられてる。

「ねぇ、邪魔しないでくれる?」
「それはこっちの台詞です。イタリアマフィアの抗争に東洋の一財団が出てこないでいただけませんか?」

綱吉の言葉と同時に二人は地面を蹴り建物の影から飛び出て周囲の敵を各々の得物で仕留めていく。
致命傷にならないよう、だけどしばらく起きてこれないよう、微妙な力加減で立っている人間を減らす。
向かう先が同じため、数十メートル先で再度二人は合流する。

「ねぇ、どこまで来るつもり?」
「そっくりそのままお返しします」

飛んできた銃弾を雲雀がトンファーでたたき落とす。
発砲した人間が瞠目すると同時に弾道を確認した綱吉が地面を蹴り、一瞬のうちにその人物に接近し一撃で地面に這い蹲らせる。
と同時に、綱吉の空いた背後に飛び込んで来た男の首筋に雲雀のトンファーが振り落とされた。
その一連の二人の連携を見ていた身内陣営はため息をつく。

「本当に邪魔しないでよ」
「今、オレ、ヒバリさんの事撃った人倒しましたよ?」
「背中がら空きだったよ」

クツクツと嘲笑する雲雀に綱吉はムッとした表情をむける。
のんびり話しているように見えるが、二人の足は休みなく地面を蹴り、全力疾走をし続けている。
ボンゴレ10代目と風紀財団トップの化け物染みた動きに追いつける人間はいない。 …一人を除いては。

(なんで、僕がこんな面倒な事を)

ボンゴレ、風紀財団の両陣営の人間の乞うような熱い視線に耐えかねたボンゴレ霧の守護者は自分の配置されたエリアをもう一人の霧の守護者に託し、暴走するトップの元へと駆けよる。

「綱吉くん、雲雀くん」
「何?」
「……」
「一つ提案があります」

化け物二人にあっさり追いついた3人目の化け物は二人に向かって言う。

「綱吉くん……我々ボンゴレの目的はこの組織のトップの身柄確保、及び人質となっている人間の解放です」
「うん」
「対して雲雀くんの興味の対象はこの組織の研究所……匣兵器とリングです」
「……」
「二人の、二つの組織の目的は違います。ですからここは一つ共同戦線を張るというのはいかがですか?」

飛んでくる銃弾を避けながら、飛びかかってくる敵をなぎ倒しながら3人は呼吸一つ乱さず並走し続ける。
沈黙を破ったのは雲雀だった。

「匣兵器とリングは全部貰うよ」
「結構です」
「だったら、いいよ。群れないけどね」

妥協点というものを10年間で学習した雲雀はあっさりと頷く。
骸は視線をその隣の自分のボスに移した。

「綱吉くんは?」
「この敷地内にいる全ての人間の命が保証される、なら」
「ふんっ」

何年マフィアのボスをやっていても最後の最後で甘い綱吉の甘言に雲雀は鼻を鳴らす。
骸も全くの同意見ではあったが、ここで綱吉の機嫌を損ねる訳にはいかないのでポーカーフェイスを保つ。

「では交渉成立ですね。今からボンゴレと風紀財団は共闘、ということで」

骸が無線にも聞こえるようにそう宣言すると周囲の空気がざわっと動いた。

「では、僕は陣営に戻ります」

二人の返事を待たずに骸は来た時と同じように鮮やかにその場を後にした。

「……君、まだアレ飼ってたの?」
「人の部下ひっつかまえてアレとか飼ってたとか言うの辞めていただけませんか?」
「ふーん」

綱吉が走りながら雲雀の方へと足を蹴り出すが、なんでもないように雲雀はそれをひょいっと避ける。
そして綱吉に近い方の腕を突き出し頭を小突いた。
まともに頭を押された綱吉はふらっとよろめく。

「……アルコバレーノ。あの二人、うっかり手が滑って攻撃してもいいですか?」
『諦めろ。あいつらがああなのは今に始まった事じゃないだろ』
「………そう、ですね」

二人の後ろ姿をチラ見した骸の愚痴はリボーンにより拒否された。
骸は深いため息をつく。

「組織のトップ同士がどういう関係であろうと、僕は構わないんですけどねぇ」

プライベートを職場に持ち込んで欲しくないものですねぇ。
という最も常識から離れた男の常識的発言はうっかり無線に拾われ、多くの同情を買う結果となった。

(2010/05/06)
「マフィアなヒバツナ」を目指していたはずが「痴話喧嘩するヒバツナ+巻き込まれた骸」になりました。