明日へ向かう道 〜その後〜


「あの、ヒバリさん。沢田、です」

誰も来るはずのない応接室の扉がノックされ、それに続いた声に雲雀は眉をしかめた。

「……何か用?」
「あの…………ここ、開けて貰ってもいいですか?」

遠慮がちに注文をつける綱吉の言葉に雲雀は眉をひそめながらも、席を立ち扉を開いた。
そして、目の前の綱吉の姿に目を見張った。

「……家出でもしてきたの?」
「いえ、あの……失礼します」

綱吉はそう言うと普段の気弱な様子を見せず堂々と応接室に入っていき「ここ使わせていただきますね」と応接セットに両手いっぱいの荷物を置き、広げ始める。
目の前に次々とおかれていく食べ物を見て、雲雀は再度瞠目した。

「ねぇ……何なの?」
「今日はヒバリさんのお誕生日だと聞いたので」
「……誰に?」
「……秘密、です」

いつもの怯える表情ではなく友人たちに見せる笑顔に近い表情を浮かべた綱吉の手は休みなく動き続け、魔法のように雲雀の好きなものを並べ続ける。
誰かに聞いたにしてもここまで細やかに自分の好物を的確に知っている人物はいただろうか?と雲雀は首を傾げた。
草壁でもここまでは知らないはずだ。知っているとすれば…自分だけ。そう思った所で雲雀の脳裏に数ヶ月前の不思議な体験が思い出された。

「ねぇ…僕に会ったの?」
「今、会ってますよ?」
「そうじゃなくて、僕じゃない僕」
「秘密、です」

綱吉の笑顔に雲雀は10年後の自分が何かしらしたに違いないと確信し、ムスッと顔を顰めた。
最近の自分はおかしいと雲雀は自覚していた。
自分以外の人間が目の前の草食動物と話していると胸の辺りがモヤモヤして気分が悪くなる。
それが例え未来の自分であろうと今この瞬間の自分ではない事には変わりない。そんな他人が草食動物を一時でも占領し、話していたかと思うと。

「イラッとする」
「え、えぇ!?」
「なんで、僕の好きなものしかないの?」
「いえ、あの、それは……」
「その中に一つでも君が選んだモノは含まれてるの?」
「……え?」

キョトンと首を傾げた綱吉に雲雀はフンッと視線を逸らした。
好きなモノに囲まれて喜ぶと思った雲雀の不機嫌な姿に綱吉は慌てた。

「ヒバリさんの好きなモノ、ですよね?」
「だから?」
「え、あの…嬉しくないですか?」
「別に君自身が選んだんじゃなければ嬉しくないよ」

すっかりそっぽを向いてしまった雲雀に綱吉は困惑する。
(話が違いますよ、ヒバリさん…!)
突然の機嫌の急降下についていけない綱吉であったが、雲雀の言葉の断片で引っかかった箇所があり静かに主張した。

「あ、でも、これはオレが食べたいと思って選びました…」

そう言って差し出した柏餅を雲雀はチラッと横目で確認し、サッと手を出した。

「え?」
「じゃあそれちょうだい」
「え?あ、はい」

綱吉が差し出したそれを受け取ると雲雀はモグモグとそれを咀嚼する。

「……お茶」
「あ、はい!」

何度かお茶を淹れさせられた事のある綱吉は素直に返事をするとお茶の準備を始めようとして、その手を止めた。
きちっと姿勢を正し、モグモグと口を動かし続ける雲雀に向かって言う。

「ヒバリさん、お誕生日おめでとうございます。来年は何が食べたいですか?」

Buon Compleanno!

(2010/05/05)
現代ヒバリが出せなかったのでオマケを……ハイスペック雲雀の後だと子供っぽくなりすぎました。