手作りに勝るモノはない


「これが!沢田綱吉から貰ったチョコです!」

ジャーンと効果音が聞こえそうな勢いで骸は自慢げにチョコを雲雀の前に置いた。
そんな骸をソファに腰掛けた並盛の歩く秩序は「ふーん」と興味なさ下に横目で見ながら、お茶をすすった。

「ちょっと、聞いてますか?自分が貰えなかったからって嫉妬して無視とか大人げないですよ」
「ふーん良かったね」

興味なさげにお茶を啜り続ける雲雀の口がもごもごと動いている事に骸は気付き首を傾げる。

「君は何を食べてるんですか?見たところテーブルには特に食べ物はありませんが…」
「……まぁまぁ味も良いね。母親にでも選んで貰ったのかな?」

骸の言葉をまるっと無視した雲雀が端的に感想を述べる。
そして思い出したように「ごちそうさま」と骸に向かって言い放った。

「ま、まさかとは思いますが……」
「綱吉からのチョコ、甘過ぎなくてまぁまぁ美味しかったよ」

シレっと言いながらお茶を再度啜る雲雀を前に骸はわなわなと震え出す。
拳をギュッと握りしめ、俯きながらぷるぷると震える骸に雲雀は「どうしたの?悪い病気ならどっか行ってよ。遷さないでよね」と声を掛ける。
全く悪びれない雲雀の言葉についに骸が切れた。目の前に置いた箱を取り上げると蓋を取り半分以下に減った中身を見て、声を上げた。

「雲雀恭弥!君は!君って人は!何をしてくれるんですか!?」
「目の前に置いたから食べていいかと思った。違ったの?」
「そんなはずないでしょうが!」
「ふーん」
「ふーん、じゃありません!僕だけが貰ったからって嫉妬したんでしょ!男の嫉妬は醜いですよ!!」
「うん、確かにチョコは貰ってないよ」
「でしょ!だから……チョコ、は?」
「うん、チョコは」

うん、と頷くと雲雀は残りのお茶を啜り、立ち上がった。

「僕の嗜好に合わせて和菓子を用意してくれたよ」

気が利くようになったよね、綱吉も。
応接室に鎮座する執務机の近くまで歩み寄るとそこに置いてある箱を持ち上げた。

「並盛で一番美味しい和菓子屋さんが洋菓子屋に対抗して作ったっていうバレンタイン用のお菓子。数量限定だったはずだからきちんと用意してくれった事だよね」

雲雀は満足気にそう言うと箱から一つ繊細な意匠な練り切りをつまんで、ポイッと口の中に入れた。
俯きながらわなわなと震えていた骸は顔を上げるとカッと目を見開き叫んだ。

「僕だけにじゃなかっただなんて!!」
「残念だったね。しかも君のはどこにでもある市販品のチョコだね」
「……君のをよこしなさい、雲雀恭弥!」
「嫌だよ。なんで草食動物から貰ったものを南国果実にあげないといけないの?」
「僕は南国果実じゃありません、この鳥め!」
「僕は鳥じゃないよ。本当に君の頭は可哀想だよね」

両者ともにどこからか取出した得物が手に握られ、一触即発の空気が漂った瞬間、ノック音が響きそれと共にか細い、遠慮気味な声が発せられた。

「あの……沢田ですが、ヒバリさんいらっしゃいますか?」
「あぁ、入ってきていいよ」

先に冷静になった雲雀がそう返事をすると、おずおずといった様子で制服を着用した綱吉が室内に入ってくる。そして室内に居た意外な人物を見つけて目を見張った。

「む、骸はなんでいるの…?」
「僕が居たら何か不都合でも?」
「い、いや、別に何もないけど……」
「綱吉は僕に用事があって来たんだから邪魔しないでくれる?」

雲雀はそう言うと骸と綱吉の間に入り込む。
綱吉との会話を打ち切られた骸は「チッ」と隠そうともせず舌打ちをした。

「で、何の用?」
「あ!そうでした!今って草壁さん、いらっしゃいますか?」
「草壁…?今は商店街の見回りに出ていて居ないよ」
「あ、そうなんですね……あの、大変申し訳ないんですが、これを草壁さんに渡していただいてもいいですか?」
「草壁に?」
「はい」

「あ、千種さんと犬さんにはクロームから渡して貰うよ」と骸に向かって付け足しながら綱吉はそう言うと可愛くリボンで結ばれラッピングされた袋を雲雀に差し出した。
雲雀や骸が貰ったものともまた違う、明らかに市販ではなく手作りといったそれに二人は過剰に反応する。

「……これ、綱吉の手作り?」
「ちょっと、綱吉くん、これは!?」
「あ、さっきまで家で母さんたちのお菓子作り手伝ってたんで…手作りって言えば手作り、ですよね。半分以上母さんが作ったんですけど」

そう言うと「男がお菓子作りなんて恥ずかしいですよねぇ」と苦笑しながら視線を下げた。
それに二人は同時に否定の声をあげた。

「男で手作りでもいいと思うよ。僕にはないの?」
「僕も、綱吉くんの手作りチョコが欲しいです!」
「……え?」

欲しい、と自己主張をする二人に綱吉はキョトンとする。

「え、でも二人にはちゃんと美味しいって教えて貰ったのあげましたよね…?」
「市販より綱吉手作りのがいい」
「同意見というのは癪ではありますが、僕も綱吉くんの手作りがいいです」
「え?え??美味しい保証ないですよ?二人ともグルメそうだから美味しいのを京子ちゃんたちに教えて貰ったんだけど……」
「「それでも」」

普段仲がよいのか悪いのか微妙な二人の息ぴったりの返答に困惑していた綱吉は思わず笑い声をあげる。
緊張を解きクスクスと笑う綱吉を骸と雲雀は常ならぬ優しい表情で見守り、お互いの表情に気付き心底嫌そうに眉を顰めた。

「分かりました。まだ家に残ってるはずなんで、一緒に来てください。ついでだし、二人ともうちで夕飯食べてってくださいね」

ニッコリと微笑んだ綱吉に、二人は再度相好を崩し、そしてそんなお互いの表情を見て顔を引き締めた。

(2010/02/14)
……バレンタイン?