元日詣


バタン

自室に戻ってきた綱吉はその扉を開けた瞬間、閉めた。
(え?今の幻覚!?オレ、寝ぼけてた!?)
そう思いながら目をこすり、再度そっと扉を開け、再度閉める。

「うん、オレ寝ぼけてるんだな。うんうん」

そう呟いてクルッと回れ右をして階段を降りようとした所で、扉の中から出てきた手に肩を掴まれ、叫び声を上げた。

「……相変わらず失礼な人ですね」
「勝手に人の部屋に不法侵入しているオマエも十分失礼だと思うぞ!」

やれやれ、困った人だ。と呟きながら眉間に皺を寄せ首を振る骸を綱吉は微妙に距離を取りながら見返す。
カウントダウンのTVを見て、中学生にしては夜更かししたよな!と普段は起きていない時間に行動している自分にちょっとドキドキしながら自室に戻ってきた綱吉を迎えたのは和服姿でくつろぐ骸だった。

「念のために聞くけど、何してるの?」
「非常に不本意ではありますが、僕は君に隷属する立場にありますので新年の挨拶を」
「……不本意なら来なくても構わないのに」
「せっかく来た守護者にその態度ですか。さすがマフィアは違いますね!」
「マフィア関係ないだろ!」

綱吉が言えば、何倍にもなって帰ってくる骸の言葉に綱吉はため息をつく。
早くお引き取り願おうと突っ込んでくださいと言わんばかりの箇所に触れる。

「で、そんな霧の守護者さんはどうして和服着てるの?」
「決まってるじゃないですか」
「え?」
「雰囲気作りですよ」
「あぁ……オマエ、コスプレとか好きそうだもんな……」
「失礼ですね」

「立ち話も何ですから、部屋に入ったらどうですか?」とまるで部屋の主かのように言いながら部屋に戻る骸に「それもそうだよね」と違和感なく頷いた綱吉が続いた。

「いや、ここオレの部屋だよね?」
「そうですけど?君は何を言ってるんですか?」

「もう正月ぼけですか?可哀想に」と言葉を続ける骸を綱吉は疲れ切った表情で見返した。
既に頭の中にはいかにスムーズにお引き取りいただくか、しかない。

「明けましておめでとうございます。昨年は大変お世話になりました。今年も……できるだけお世話にならないように心がけますのでよろしくお願いします」
「Buon Capodanno!」
「ぼんかぽ…?」
「Buon Capodanno、イタリア語で明けましておめでとうの意味です。このくらい覚えておいた方がいいですよ?」
「あぁ…そうですね……」

綱吉の帰って欲しいオーラをことごとく無視する骸に、綱吉は隠しもせずため息をついた。

「……どうしたらお引き取りいただけますか?」
「初詣に行きたいです」
「……は?」
「日本では元旦に初詣に行く風習があるとうかがっています。だから行きたいです」
「……黒曜の皆で行けば」
「行きたいです」

綱吉の言葉を遮り骸が無言の重圧を掛けてくる。
しばし無言の視線での攻防が繰り広げられたが、綱吉がすぐに降参した。

「分かった。初詣に行けば、骸は満足して成仏……じゃない、帰ってくれるんだな?」
「今一瞬凄い失礼な事言いませんでしたか?」
「気のせい気のせい。ほら行くぞ」

はははと染みついた愛想笑いを浮かべ、コートを手に掛けた綱吉の腕を骸が掴んだ。

「僕は着物を着ています」
「うん、見れば分かる」
「君も着なさい」
「意味分からないよ!」
「大丈夫です。話はつけてます」

骸はそう言うと階下に向かって「奈々さん、お願いします」と声を掛ける。
それに「はいはーい」と弾んだ声と、軽快に階段を上る音と共に綱吉の母親が現れた。
目を白黒させ、奈々と骸を交互に見ていた綱吉は「つっくん、ばんざーい」という母の言葉であれよあれよという間に服を脱がされ、あっという間に着物を着付けられてしまった。

「つっくん、似合ってるわよ」
「母さん…これ…?」
「骸くんが持って来てくれたのよ?一緒に初詣行くんでしょ?」

「奈々さんありがとうございます」という骸の声をともに背中を押されるようにあっという間に綱吉は家の外へ連れ出されていた。
魔法に掛けられたような感覚で、骸の見事な手腕に綱吉は思わず拍手をしそうになる。

「さて、綱吉くん行きましょうか」

呆然としている間に手を取られ歩き出していた事に綱吉が気付くのは、並盛神社の鳥居が見えてから、である。

(2010/01/05)
和服骸ツナカラーに触発されて。