Flying Santa Claus


「こんばんわ……君はなぜそんな格好をしているんですか?」

綱吉の部屋へ窓から不法侵入を果たした骸は綱吉の格好を見ると目を見開きその後首を傾げながらそう言った。
突然の来訪者にギョッとした綱吉は無駄なあがきと分かりながら自分の服装を出来る限り骸の目から隠そうと必死に小さい身体を縮み込ませた。

「み、見るな!ていうか夜中に勝手に入ってくんなよ!」

なんか用事かよ!?と喚く綱吉の声の大きさに骸は眉を顰める。
そして大げさに首を振りながら土足のまま綱吉の前を横切り当然のようにベッドに腰を掛けた。
そんな骸の慣れた行動に綱吉は文句の一つも言おうとして口を開き掛けるが諦めたように頷いてその口を再び閉じてしまう。

「メリークリスマス、ボンゴレ」
「……それが言いたかったんならパーティに来れば良かったのに」
「僕がマフィアとその仲間たちと楽しく食事をするでもと思いますか?」
「……思いません、すみません、オレが悪かったです。だから今すぐお引き取りください」
「つれないですねぇ。……今の君はサンタクロース、なんじゃないんですか?」
「うわっ、そうだ!見るな!目つぶれ!」
「嫌がるボンゴレも一興ですねぇ」
「……うわー六道さんは相変わらずの性格ですねー…」

半眼しながら睨む綱吉の視線を受けて骸は嬉しそうにクフクフと変な笑い声をあげる。

「それでボンゴレ。答えをいただいていないのですが、その格好の真意は?」

僕の為のサービスでもなさそうですし。と綱吉にはとうてい意味が理解出来ない、というかしたくない内容を呟きながら骸は取り柄の一つでもある無駄に整った顔を綺麗に笑顔に変え訪ねる。
六道骸という人物の中身を知らなければたいていの人間は騙されるであろう胡散臭い笑みに綱吉は余計に警戒を強める。

「ボンゴレ、」
「あぁ、はいはい。リボーンのお達しだよ。あいつコスプレが趣味だからって人にまで押しつけて…」
「ほう」
「『今晩中に守護者全員にサンタコスでプレゼントを配って歩け。朝日が昇るまでに達成出来なかったらねっちょりお仕置きだぞ』だってさ」
「なるほど」
「って事でオレ今忙しいから、どうぞお引き取りください」

ほら立って立って。と骸を急かす綱吉に骸は心外だという表情を向ける。

「君はお忘れですか?僕も君の守護者の一人ですよ」
「あー……オレの霧の守護者はクロームで足りてますので大丈夫です」
「あんまり僕を苛めると悲しすぎて世界大戦を起こしたく」
「あぁ!本当に失礼しました!」

子供の相手をするように綱吉は骸に向かって両手をあげて降参ポーズを取る。
そんな綱吉の態度に骸は怒るどころか嬉しそうに笑う。

「で、骸は何が欲しいの?オレの身体とかはなしな!」
「おや…君も随分マフィアらしくなってきましたね」
「どこがマフィアっぽいんだよ……で?」
「そうですね……お金で買える物はたいてい自分で手に入れられますし」
「……さいですか」
「面白そうですし、サンタと一緒に行動するトナカイにでもなって差し上げますよ」
「へ?」
「一晩サンタと過ごさせてください、というのはありですか?」
「へ?骸がそれでいいっていうなら別にいいけどさ…変な奴だな」
「なんとでもおっしゃってください」

ご機嫌な様子で骸はクフフと笑いながら、ぐるっと視線を部屋中に向ける。

「アルコバレーノ、その辺に居るのでしょう。君の事だからトナカイのコスプレも用意してるんではないですか?」
「よく分かったな」
「ダメサンタだけでは心許ないので優秀なトナカイになって差し上げますよ」
「骸、オマエ、自力でコスプレでもなんでも出来るからいらないだろ…?」
「ボンゴレは無粋ですねぇ。ようは気持ちの問題ですよ」
「ツナ、だからオマエはダメなんだ」

コスプレ好きという共通点で意思疎通でもしたのか、リボーンと骸の二人が同時に綱吉に言い返してきたため綱吉は辟易した表情を浮かべる。

「分かったから。もうなんでもいいから、早くしてよ……」
「ボンゴレはせっかちですね。……仕方有りません幻覚で妥協してあげましょう」

骸はそう言うと瞬く間にサンタの服装に衣装を変えた。
しかもご丁寧に綱吉が着用しているものと尺以外は寸分違わず同じ仕様だ。

「……オマエ、自分でトナカイになるって言ってなかったか?」
「そう思ったのですが、考えてみればマフィアの元に遜る存在になるのは面白くありませんでしたので。君がトナカイになりますか?」
「ならないよ!あぁ、もう行くぞ…!?」

クルッときびすを返して部屋から歩いて出ようとした綱吉を骸はフワッと抱き上げる。
突然の出来事に驚いた綱吉は落とされないようにがしっと抱きつくように骸の背中に手を回す。

「何、するんだよ!」
「いえ……なんとなく他の人の所に行かせるのが面白くありません」
「はぁ?」
「可愛いボンゴレのサンタ姿を拝むのは僕だけでいいのではないかと」
「はぁ?」
「ということで、アルコバレーノ。僕はプレゼントにサンタを一体いただいて行きたいと思います」

オマエ、馬鹿か!?馬鹿だろ!?おろせ!!!と騒ぐ綱吉を無視して骸は入ってきた状態のまま開け放たれていた窓枠に足をかける。

「Arrivederci」

室内で大人しく見送るリボーンにそう言い残すと、綱吉を抱っこしたまま華麗に中に飛び出した。

「ツナ、帰ってきたらねっちょりお仕置きと修行だぞ」

最後に耳に入ってきたリボーンの声と落下の恐怖に怯える綱吉の近所迷惑な絶叫が聖夜の並盛に響き渡った。

(2009/12/25)
「可愛い綱吉くんは誰にも見せたくありません」が本音の骸。