Beautiful day


「オマエ、何やってるんだよ…?」

授業を終え一緒に帰ろうと思っていた山本と獄寺に「ちょっと用事あるから先帰るわ!」「本当にすみません…!こいつと一緒だなんて不本意なんですがどうしても外せない用がありまして…」と置いてけぼりをくらった綱吉は一人とぼとぼと昇降口から正門に向かって歩いていた。
そして門の手前で六道骸が門に寄りかかって立っているのを見つけ、声をかけた。

「おや、君には僕が人を待っている以外の行為をしているように見えるのですか?」
「いや、見えないけどさ…」

クフフと上機嫌に笑う骸に反して綱吉はますます胡散臭そうな表情を浮かべた。
その視線は骸の手に固定されている。
綱吉の視線に気付いた骸は「これが気になりますか?」と首を傾げて、その手を持ち上げる。

「気になるけど、別にいいや」
「相変わらずつれないですね、君は」
「……ところで、オマエ平気なの?」
「短時間であれば、問題ありませんよ」

未だに本体は水牢の中に存在している骸の心配をする綱吉に骸は破顔した。
そのあまりにも屈託ない骸の笑顔に、綱吉は思わず鞄を胸元で抱きしめ一歩後退する。

「…さすがにその態度は傷つきますよ」
「ご、ごめん。で、何しに来たの?…って聞くのもわざとらしいけどさ」
「君の誕生日をお祝いさせていただきたくて輪廻の果てより舞い戻ってきましたよ」
「うん、前半はありがたくいただくけど後半はいらない」
「相変わらずですね」

そして二人で顔を見合わせプッと吹き出す。

「お誕生日おめでとうございます、綱吉くん」
「ありがとう」
「これをどうぞ」

骸はそう言うと一度綱吉が存在を黙殺した大きすぎる花束を差し出す。
数秒間だけ考えた綱吉は満面の笑みでそれを受け取る。

「ありがとう」
「生まれてきてくださって…ありがとうございます」
「改めて言われると恥ずかしいね」

真面目な骸の視線に急に羞恥を覚えた綱吉は、名前の分からない綺麗な紫色の花に顔を埋めた。
花の良い匂いがフワッと鼻孔に広がる。

「せっかくアルコバレーノと取引をして君が一人になる時間を確保したんですから、顔を上げてください」
「…オマエが犯人かよ」

挙動不審だった友人たちに心の中で謝罪した綱吉が顔をあげると、思いの外至近距離に骸の顔がありそのまま唇を掠めるように奪われた。

「!?オマエっ、ここ、学校の前!何すんだよ!」
「僕は長くいれませんからね。我慢出来ませんでした」
「でも、場所が!」
「それなら大丈夫です。幻覚で僕と君は見えないようになってますからね」
「……ならいいけどさ」

そういうと綱吉は骸に「ちょっと来い」と手招きする。
素直に「なんですか?」と近づいてきた骸の制服を思い切り引っ張るとそのまま頬にキスをした。

「つ、綱吉くん!?」
「…オマエの気持ちが嬉しかったから幸せのお裾分け」
「ありがとうございます。君が幸せならそれだけで僕は幸せになれますよ」

骸が幸せそうに微笑むのにつられ綱吉もへらっと微笑む。

「もう少し君と一緒にいたい所ですが、そろそろ時間のようです」
「そっか…」
「その花は、出来ましたら君のお母様に頼んでドライフラワーにでもしてください」
「なんで?」
「…その花はスターチスという花です」
「スターチス?」
「えぇ」

「花言葉は」という骸の声が綱吉の耳にフワッと入ると同時に骸の姿は消え、放課後特有の喧噪が戻ってきた。
綱吉の目の前には困った表情を浮かべるクロームが佇んでいる。

「クローム、ありがとう」
「私は何もしてないよ。ボス、お誕生日おめでとう」
「ありがとう。うち来るよね?」
「……うん、呼んで貰ってる」
「じゃ、一緒に行こうか」

綱吉の言葉にコクンと頷くと二人は連れ添って歩きだす。

「言い逃げずるいよなー」
「骸さま、嬉しそうだった」
「そっか。いつかちゃんと3人でお祝いしたいね」
「…うん」

チクンとした胸の痛みをごまかすように綱吉は花束を抱きしめた。
それをじっと見ていたクロームが遠慮がちに言葉を発する。

「…ボス。その花言葉、知ってる?」
「言いかけて骸消えちゃったから知らないんだよー」
「永遠に変わらない心」
「え?」
「変わらない誓い、なんだって」
「…そっか」
「うん」

綱吉はもう一度花束を大切そうに抱きしめた。

(2009.10.14)
花に詳しくないので間違ってたらすみません…。なんか寂しい感じになってしまいましたが、両思いなんで大丈夫。なはず。