プレゼントは徒歩でやってくる。


綱吉は緊張した面持ちでドアをノックした。

「…誰?」

中からは案の定というか、当然というか風紀委員長の声が返って来たので綱吉は諦めに似た表情を浮かべ溜息を一つついた。
事の発端はGW、だった。
GW初日、土曜日。特に予定もなかった綱吉は並盛商店街をプラプラ歩いていて…別の中学の生徒数人に絡まれた。
GW2日目、日曜日。母親に頼まれて夕飯の買い忘れを買いに近所のスーパーへ行き…高校生3人組に絡まれた。
GW3日目、月曜日。珍しく部活が休みだという山本と遊ぶために待ち合わせ場所に向かう途中でぶつかった人が、運悪くそういう筋の方だった。

(オレってどうしてすぐに絡まれるんだろう…)

そんな絶望的な気分になる綱吉だったが、3日間とも無傷で切り抜けていた。
…もちろん、ダメツナとあだ名される綱吉が自力で逃げおおせているはずはなく。
何故か毎回風紀委員の皆様、というより副委員長の草壁が、颯爽と現れ風紀を乱したという名目で相手方を成敗してくれた。
何故か、本当に不思議で仕方ない綱吉だったがここまで世話になるとそのままにしておけないのが道理というもので。
副委員長に御礼の品を謙譲しようと考え、確実に会えるのはどこだ?と考えた結果短絡的に思いついた場所に足を運んでしまっていた。
主たる委員長の存在を頭の中からすっ飛ばしていた事に綱吉が気づいたのは、悲しい事に応接室のドアをノックする寸前だった。

「誰って聞いてるんだけど?」
「あ、はい!沢田です!」
「…沢田?」
「はい、沢田綱吉…と申します」

フルネーム言われなくても分かるよ。
とわざわざドアを開けてくれた雲雀に対し「ですよねー」とニヘラと笑って返答した綱吉は頭を軽く叩かれた。
平時の雲雀からしてみれば随分優しい叩き方で、綱吉は「おや?」と首をかしげた。
非常に分かりにくいが、なんとなく機嫌もよいように…見えなくもない。

「で、わざわざ祝日に何しにきたの?」
「あのですね…草壁さんっていらっしゃいますか?」

綱吉の返答を聞くや否や先ほどの雰囲気から一転、不機嫌な空気が雲雀から漂いだした。
非常に分かりにくい微々たる変化だが、こんな時ばかり冴え渡る超直感で綱吉は分かってしまう。

「草壁に何の用?」
「あ、あの!最近、連日草壁さんに助けていただいているので御礼の品をと…ってなんで物騒なモノ構えるんですか、仕舞ってくださいヒバリさん!」

未だどこかムスッとした表情の雲雀がトンファーを構えたまま、視線を綱吉から逸らしてボソっと呟いた。

「気に入らないね」
「は、はい?」
「そのケーキは僕の好物」
「は、はい」
「草壁はここに居ない」
「は、はい」
「今日は…僕の誕生日」
「は、はい……えぇ!?」

淡々と話す雲雀の言葉に頷いていた綱吉は「誕生日」という単語に驚いて、叫ぶ。
そんな綱吉に視線を戻した雲雀はわざとらしい程大きな溜息をついた。

「知っててきたわけじゃなかったんだ」
「ヒバリさんにも誕生日があったんですね、って申し訳ありません!」

ギロっと睨みながらトンファーを構え直したヒバリに綱吉は低頭傾首の姿勢でひたすら謝る。

「えっと…お誕生日おめでとうございます」
「……ありがとう」
「使いまわしのようで申し訳ないのですが…もしよろしければコレ食べますか?」
「…美味しい紅茶がある」
「では、おめでとうございます…っと!」

箱を差し出しながら半分逃亡の姿勢をとっていた綱吉は、箱を持った腕ごと室内に引っ張り込まれバランスを崩しかけながらたたらを踏んだ。

「2個入ってるみたいだから君も食べなよ。紅茶は淹れてあげる」
「えぇ!?…あ、ありがとうございます…?」

(群れるの嫌いな人なのにやっぱり誕生日はヒバリさんにとっても特別なのかなぁ?)
そんな少しズレた感想を浮かべる綱吉を背後から見守っていた影がドアが閉まるのと同時に廊下へと出てくる。

「委員長、お誕生日おめでとうございます。…沢田さん、すみませんがよろしくお願いします」

(2009.5.13)
私は委員長をなんだと思っているんでしょうか…?