プレゼントは空輸で


「あーーーー!」

まだ、寝ている者も多い早朝、閑静な屋敷内に綱吉の絶叫が響き渡った。
隣の部屋に待機していた優秀な右腕が真っ先に駆けつける。

「10代目、どうされましたか!?」
「今日って5月5日だっけ!?」
「はい、そうですが…」
「どうしよう!雲雀さんの誕生日だって事すっかり忘れてた…」

機嫌損ねたら情報流してもらえなくなる。
うわー、どうしよう困ったな。
ブツブツと呟き続ける綱吉と一緒になって、獄寺もおろおろと部屋を動き回る。

「オマエら、本当に落ち着きってもんがねえな」
「リボーン!」
「今から日本に行ってくればいいだろ。獄寺、フライトの手配しろ」
「は!はい!」

リボーンの一声(自分の一声以上の威力がある、と綱吉は思っている)で優秀な右腕は携帯を取り出し部屋から飛び出していった。
恐らく10分後には全ての手配が完了しているだろう、とその後ろ姿を見送りながらぼんやりと綱吉は思った。

「ほら、ダメツナ。ボンゴレの為にも雲雀の機嫌とってきな」
「リボーン…」
「ちなみにオレはちゃんと空輸で雲雀へのプレゼント手配してるからな。オマエと違って抜かりないから」
「…ですよねー」

覚えてたなら一言くらい教えてくれればよかったのに!
と綱吉は思ったがそれこそ声に出してしまえば自分の体のどこかに穴が開くのは確実だったため口を閉ざして我慢をした。



というようなやりとりがあったのが13時間ほど前。
驚異的なスピードで全てを用意して(優秀な右腕がプレゼントまで手配してくれていた)、2時間後には飛行機に乗り込んで、10時間半のフライトを経て日本にたどり着いた。
綱吉の計算の上では19時のはずだった。

(時差をすっかり忘れてたなんて……っ!)

いつ連絡を取っても平常どおりの受け答えを雲雀もその右腕である草壁も行ってくれるため、綱吉はイタリアと日本という2つの国の間にある時差という壁をすっかり失念していた。
通常8時間。サマータイムで7時間。
悲しいことに、機内で「時計を日本時刻に合わせてください」と言われて初めて気がついた。
その瞬間綱吉の時計は一気に7時間進んだ。 現在、日本時刻は深夜2時。
日付は5月6日になってしまっていた。

「絶対、リボーン気づいていながら面白がって手配させたに決まってる…っ」
「君、こんな時間に人を呼び出してその態度は何なの?」

到着便に乗っていた客が薄暗い空港内のソファで時間を潰したり、近隣のホテルへ移動していく中わなわなと到着口まん前で震えていた綱吉の背後から、闇の中凛と響く声がかかった。

「ひ、雲雀さん…」
「赤ん坊から連絡があったから来てあげたんだけど…何?」
「えっと……お恥ずかしい事ですが時差という存在をうっかり失念しておりまして…」
「まどろっこしい説明は要らないんだけど」
「あ!はい!そうですね!お、お誕生日おめでとうございます……した」
「ねぇ、それだけの為に僕を呼び出したの?」
「はい…その通りです…本当は19時の予定でしたので一緒にお食事でもと思っていたのですが…」

もごもごと言葉を濁す綱吉をじっと見ていた黒い瞳が、ふと厳しさを和らげた。

「君は相変わらずだね」
「本当に申し訳ありません…」
「まぁ、赤ん坊から貰ったプレゼントで僕は機嫌がいいから不問にしてあげるよ」
「あ、ありがとうございます!」

(リボーンありがとう!こんなにオマエに感謝したことないかも…!)
イタリアに向かって本人に聞かれたら風穴が開きそうな感謝の念を、綱吉は送った。

「で、雲雀さん、なんでオレは引きずられているんでしょうか…?」
「赤ん坊からのプレゼントだから」
「………!?」
「どうやら君がプレゼントみたいだよ、赤ん坊からの」

ほら、と雲雀が綱吉に手渡したメッセージカードにはリボーンらしい流暢な文字で
『オレからのプレゼントを空輸した。受け取りは成田で。深夜2時に到着予定』
と書かれている。
何度綱吉が読み返しても、深夜2時に成田に到着、と書かれている。

(リボーン…!)

「さて行こうか」
「あの、せ、せめてお手柔らかにお願いします…!」

嬉々としてマフィアの10代目を引きずって歩く風紀財団の長を、お供をしてきていた草壁は心の中で合掌しながら見送っていた。

「沢田さん、申し訳ありませんでした。私がもっと早く気づいてご連絡を差し上げていればこんな事態にならなかったんですよね……」






数日後イタリアへ帰還した綱吉は、その後1週間リボーンを無視し続けた。
発砲されようが、どんな目に合わされようが、頑なに無視する綱吉に最終的には最強のヒットマンが折れたのを目撃してしまい右腕は密かに咽び泣いた。
更に数日後、風紀財団から送られてきたイタリアの暦に合わせた5年分の財団スケジュールが書き込まれたカレンダーを綱吉が大切そうに引き出しに仕舞うのを目の当たりにしてしまい、右腕は更に泣いた。

(2009.5.6)
遅くなってすみません!委員長とツナの間にあったのがR15なのかR18なのかはご想像にお任せします…っ!