僕らの夏


季節は夏。
場所は並盛中学の応接室。

「んっ……、ひばりさん、あつい、です」

の、ソファの上。
更に言えば綱吉はソファに座る雲雀の上に座っていた。

「夏だからね」

このくそ暑い中涼しい顔をした雲雀の上に座らせられた綱吉は落とされないように必死に抱きつきながら文句を言うが雲雀は取り合う事なく鼻で笑って腰を揺らした。
軽く揺すられる度に綱吉の鼻からは中学校の校舎内に全く相応しくない、不健全極まりない声があがる。
中学生の夏休みなんて健全に健康に、太陽の下で運動したり友達と遊んだり、宿題に慌ててみたり、気になるあの子とばったり会って見慣れぬ私服にときめいてみたりそんなもんだろうと思いながらも、快楽に流されやすいと最近知りたくもない事実を知ってしまった綱吉はあんあんと声をあげて結局雲雀を求めてしまう。

「ひばりさんの力で、クーラーつけて、ください、よ」
「やだよ」
「ケチ、……あっ」

接合部分のみを露出している雲雀は涼しげな顔をしながら汗を一筋滴らせた。
新陳代謝の良い綱吉は半裸状態にも関わらず、全身汗や自分の吐き出した体液やらで濡れている。
快感と暑さでぼーっとする頭で「やっぱりなんだか納得いかない」と綱吉は思う。

「なんで、ひばりさん、は、そんな涼しそうなんですか」
「なんでだろうね?」

面白そうに笑った雲雀が大きく突き上げると、ぐちゅりとどう考えても学校で聞くはずのない卑猥な音が自分の下腹部から聞こえてきて綱吉は暑さのせいだけではなく赤面した。
ずるい、と綱吉は思う。
いつもいつも自分ばかりが翻弄されて、雲雀は余裕の表情でいる。
綱吉が拒絶出来ないのを良いことに夏休みもなんだかんだで学校に呼び出し、校庭で大きなかけ声を上げて部活に励んでいる生徒たちの声をBGMに、率先して風紀を乱している雲雀は一体どれだけの場数を踏んできているんだと疑いたくなる。
事実、綱吉は疑っていた。

「ねえ、余計な事考えてるでしょ?」
「だって、」
「君は僕の事だけ考えて、僕にだけその顔を見せてればいいんだよ」
「……ずるい、です」

綱吉の目の前で涼やかな顔をした雲雀が、少しだけ汗をかきながら笑って見せたので綱吉は「やっぱりずるい人だな」と思いながらあれこれ難しい事を考えるのをやめて必死に目の前の大好きな先輩に抱きついた。
直に触れる粘膜も、皮すら邪魔だと感じる肌も外気に負けないくらい暑くてどうにかなりそうだと思った。


***


「はー、涼しい」
「で、君は何考えてたの?」

クーラーの入った涼しい室内で雲雀に借りた少し大きめのジャージを着た綱吉は、先ほどまでちょっと口に出しては言えないような行為をしていたソファの上で「極楽〜」と涼んでいた。
事後の雲雀は少しだけ優しい。
冷茶をソファ前のローテーブルに置きながら「僕も座りたいから詰めて」と言うと同時に綱吉の足を気にせずに腰掛けた雲雀が聞く。

「ぶっちゃけてお聞きします。オレで何人目ですか?」
「……は?」
「だから、応接室に連れ込むのってオレで何人目ですか?」
「………は?」

沈黙が訪れた後、綱吉の頭に雲雀の鉄拳が落ちた。
トンファーじゃなかっただけありがたい、と突然の暴力に対しても無条件で受け入れてしまっている自分に綱吉は気付かない。

「……ヒバリさん、痛いです」
「あのさ、君は僕の事なんだと思ってるの?」
「いえ」
「そんなの君が初めてに決まってるじゃないか」

当然のことの様に言われた言葉に一瞬綱吉の頭は真っ白になった。
真っ直ぐに前を向いた雲雀の耳は良く見ると真っ赤だ。

「え、いつでも余裕そうで」
「余裕なんてないよ」
「涼しい顔して」
「暑いのは昔から得意なんだよ」
「だって」
「……綱吉は僕が経験豊富な方がいいの?」
「そんな訳ないですよ!」
「じゃあ問題ないよね」

「そんなに疑うなら僕の心臓の音聞いてみてよ」とのし掛かってくる雲雀を「え、今ですか?今度でいいです!今度確認させていただきます!!」と押し返そうとしたがそもそもの体勢が不利過ぎてそれもままならない。
「クーラーも効いているし、まあいいか」と結局綱吉は流されてしまうのだった。

(2011/08/21)
エロ書きたかっただけなのに、脱線