age


最近目が霞むなぁ、と執務室に閉じこまり書類やディスプレイと長時間にらめっこしていた綱吉は目を擦った。

「うぅー疲れたぁ」

時計を見ると、その前に確認した時間から軽く6時間以上は経過しており自分はそんなに長時間集中していたのかと綱吉は驚いた。
それと同時に疲労を感じても仕方ないよな、と自分に言い聞かせながら猫のようにぎゅーっと伸びをした。ついでにあくびも一つする。
そしてこの疲れは長時間労働によってもたらせられたものであって決して加齢の問題ではないと自分に言い聞かせた。
絶対に、違う。

「おや?人の事はこんな時間までこき使う癖にご自分はあくびですか?君もいいご身分になりましたねぇ」

ノックもせず勝手に執務室内に入ってきて口を開いてまず言うことがこれかよ、と綱吉はいつの間にか自分の目の前にモデル顔負けのポーズで佇んでいた骸を半眼して睨む。

「6時間ぶりの休憩だよ。オマエ、本当にいつも絶妙なタイミングでくるよな……なんかこの部屋に仕込んでたりする?」
「しませんよ。失礼ですね」

報告書です、と手にしてした紙を綱吉の未処理書類の山の上に重ねる。

「げっ、また増えた」

骸が悪い訳ではないのだが思わず綱吉は顔をしかめそのまま机に突っ伏する。

「ため込む君が悪い」
「そうですねー……」

答えるのも億劫だと言わんばかりのお座なりの答えを返す綱吉に骸はもう一歩近づくとその頭を撫でた。
いつからか綱吉の記憶にはないが、気付けば骸は綱吉に優しくなっていた。
本人には全く自覚がない気がするが、人のことを甘い甘いとバカにしながら自分が他の誰よりも綱吉に甘い骸が綱吉は嫌いではない。
綱吉の頭を撫でる手の感覚はどこまでも、優しい。
大きな手のひらが丁寧に髪の毛を漉くのを綱吉は黙って甘受する。
うっかりすると寝そうになる心地良さを堪能していた綱吉に爆弾のような言葉が落とされた。

「君……すっかり老けましたねぇ」

髪に以前のような張りがありませんよ、これだから三十路を超えた男は、と失礼な言葉を骸は続ける。

「ボンゴレ10代目は不老不死の秘薬でも服用しているんじゃないか、なんて噂されてるみたいですけど、もう君もすっかりおっさんですよね」

容赦なく失礼な言葉が吐き出され続けるのを綱吉は怒りで震える体を必死に押さえて耐える。
顔が見えなくて良かった。見えてたら怒鳴り返してたよ。と腹の中で嘆息する。

「童顔なのに老け込んでるなんて、悲惨ですね」

骸の言葉に綱吉の忍耐が限界を迎えた。
がバッと顔をあげ、撫で続けている腕を振り払い、椅子を倒して立ち上がる。

「誰のせいだと思ってるんだよ!」
「アルコバレーノたちとか雲雀くんとかですかね」
「筆頭迷惑の塊な自分を棚に上げるな!オマエら全員のせいだよ!!」
「オマエら、なんて一把ひとかけらにされると不愉快です」

全く困っていない表情で骸はやれやれと演技かかった様子で首を振る。
その容姿があまりにも出会った頃と変わらず若々しい物であり、それが綱吉の怒りに拍車をかけた。

「骸は全く老けないな!」
「ありがとうございます。やはり僕の容姿はボンゴレにとって有意義な武器の一つだと思ってますからお褒めいただいてうれしいですよ、ボス」
「あぁむかつくな!」

からかうように吐き出された言葉に綱吉は激昂する。

「本当に誰のせいだと思ってるんだよ!うちの守護者たちは誰をとっても問題児ばっかで、ボスのオレが一人苦労してるんだよ!」
「それは大変ですねぇ」

同情しますよ、と他人事のように言う骸に綱吉は目を見開いた。

「オマエも当然入ってるに決まってるだろ、バカ骸!」
「バカとは心外ですね」
「オマエは三十路を越えてもまだ色男だよな本当に!色気だけ増やしやがって!!」

綱吉の言葉に骸は首を傾げた。

「綱吉くん、僕の容姿をほめてますか?」
「誉めまくってるよ!オマエ、なんでそんなかっこ良く年とってるんだよ!格好良すぎるんだよ!」
「おやおや。そんなに誉めていただけるなんて、嬉しいですよ」

にっこりと笑った骸に綱吉は勢いで余計な口を滑らしたことに気付いた。

「……今の忘れて。命令」
「嫌ですよ。綱吉くんが僕のことかっこいいと思っていただけただなんてこの容姿も捨てたもんじゃありませんね」

満更でもない様子でクフフと嬉しそうに骸が笑う。
少しばかり目尻に皺が寄るが、それすらも骸の優れた容姿に渋さを増加させる要素にしかならない。
悔しい、と綱吉は歯ぎしりし、倒した椅子を戻すとどすんと座り込む。

「……仕事するから、用事が終わったら帰って」
「はいはい」

すっかりへそを曲げてしまった綱吉に優しい視線を向けた骸はその手を伸ばすと再度優しく髪を撫でた。

「あ。」

驚いたような声をあげ、手が動きを止めた。

「……なに?」
「綱吉くん、白髪がありますよ」

抜きますねー、と嬉しそうな声がし次いでプチッ何かを引き抜く音がした。それと同時に綱吉の中でも何かが切れる音がした。

「本当に老けましたねぇ」

どこか嬉しそうに呟かれた骸の声に綱吉は無言で拳を振るい、答えた。

(2010/08/29)
突発的におっさんな骸ツナが書きたくなったので。三十路の骸ツナが大好きです。