「せっかくのお祝いの席なのに…本当にごめんね、山本」
「ツナのせいじゃないから気にするなって」
「うん……でも、オレの監督不行届のせいだから」
あくまで骸の暴挙は自分のせいと言いつのる綱吉に山本は密かに眉を顰める。
しかしそれも一瞬の事で、すぐにいつも通りの笑顔を浮かべたため綱吉はその事に気付かなかった。
「そんな事よりも、ツナが持ってきてくれたこのワイン飲まね?」
「うん!これ、オレ達の産まれた年と同じ年のワインなんだよ」
「お!マジで?すごいな」
「でしょ。山本と獄寺くんとオレの誕生日にそれぞれ開けようと思って3本用意したんだ」
「おぉ!すごいのな!」
山本と綱吉の会話を聞いていた山本の部下がワイングラスを山本に差し出す。
山本はそれを片手で受け取ると部屋の奥にあるソファをワインを持っている手で指し示し、綱吉を誘導した。
素直に言う事を聞いた綱吉はそのままソファにストンと腰を下ろす。
それを見ていた山本は手際よくワインを開封するとグラスに真っ赤な液体を注いだ。
「ツナ」
「ありがと」
山本はグラスを手渡すと一瞬思案した後、綱吉の正面ではなく横並びの位置へと腰を下ろした。
「え?山本?」と戸惑う綱吉を無視して「乾杯」と無理矢理グラスを合わせた。
綱吉は困惑を振り払うように首を左右に振ると笑顔を浮かべ、山本に向かい合う。
「改めて、山本誕生日おめでとう」
「ありがとうな」
「今年も山本の誕生日が祝えて、オレ嬉しいよ」
「オレもツナに祝って貰えて嬉しいのなぁ」
グイッとビールを飲むような勢いでワインを飲み干した山本は手酌で2杯目を注ぎ入れる。
その赤い液体を見つめながらボソッと呟く。
「ところでさ……ツナって骸と付き合ってるの?」
「ぶっ……はっ!?山本何言っちゃってるの!?」
「山本酔ってるの?そんな訳ないのに…おかしいのー」と腹を抱えて笑う綱吉にローテーブルにグラスを置きながら山本は真面目な表情で顔を寄せる。
「そっかー。だったらさ、ツナ」
「何?」
「オレの事は、好き?」
「えっ急に何言ってるの?」
「じゃあ、嫌い?」
「嫌いな訳ないよ!」
「うんうん。じゃあさ、ツナ。試してみね?」
「何を?」と綱吉が言う前に山本は素早く綱吉のグラスを取り上げテーブルに置くと、抱きしめた。
「え?どうしたの山本?」
「部下の前!部下の前!」と騒ぐ綱吉を山本は無視する。
「これ、嫌?」
「ううん」
腕を解き至近距離で目を見ながら山本が首を傾げるので、綱吉は条件反射的に「大丈夫」と答える。
「それなら良かった」
そう言った山本は今度は髪を一房持ち上げるとそこに唇を寄せ「これは?」と聞く。
綱吉が「嫌じゃない」と答えると今度は前髪を持ち上げおでこに唇を寄せる。
「これは?」
山本が再度訊ねる。
恥ずかしさで真っ赤になりながらも山本の挙動にすっかり流されている綱吉は「平気」と答える。
「じゃ、ツナ、これは?」
そう言うと山本は綱吉の可愛らしい鼻に唇を落とした。
綱吉はビクッと身体を震わせるが「うーん、大丈夫?」と首を傾げながら答えた。
綱吉の言葉に山本は頷く。
「じゃあさ、ツナ、ここは?」
山本は綱吉の顎をついっと持ち上げると赤く染まっている頬に口づける。
「うわっ」
さすがに驚いた綱吉は声をあげるがそれでも「うぅーん、嫌ではない?」と素直に答える。
「なるほどなるほど」と言った山本はそのまま綱吉の唇に自分の唇を近づけもう少しで触れ合う、というところでさすがにおかしいと気付いた綱吉がストップの声を上げた。
「ストップ!ストップ!」
「お?」
「山本、さすがにこれ、ちょっとおかしいよね?」
「はははーそうかな?」
「そうだよ!飲み過ぎだって!」
「そうだな。ちょっと酔い過ぎちゃったのな〜」
顔を真っ赤にしながら胸元をポカポカ叩く綱吉を見下ろしながら山本は顔に笑顔を貼り付け、笑った。
(初稿2010.05.04)
山本はこんな感じでちょっとちゃっかりツナとの距離をじわじわ詰めてくれると嬉しい