トライアングラー


山本の誕生日パーティーという名の宴会をボンゴレの屋敷の一角にあるパーティールームで雨の守護者部隊が執り行っていると耳にした綱吉は事務作業が一段落した所で「ふんふーん」と鼻歌を歌いながら秘蔵のワイン片手に行く先々で深々と下げられる頭に手を振りながら廊下を歩き、顔を出した。
ドアを開けた瞬間「10代目!」という多数の息をのむ声と共に綱吉と主役を真っ直ぐに結ぶ1本の道がザザッと拓け、綱吉は苦笑しながら山本に向かって手を挙げた。

「ツーナっ」
「お誕生日おめでとう、山本!」

部下がこの日のために取り寄せてくれたのか日本のメーカーの缶ビールを片手に立っていた山本が周囲がパッと明るくなるような笑みを浮かべ空いている方の手を大きく振りながら綱吉に大股で歩み寄ってくる。
山本を囲んで談笑していたであろう部下達はその場で姿勢を正し恭しく綱吉に向かって頭を下げる。

「せっかく楽しんでる所、お邪魔しちゃってごめんね」
「邪魔なんかじゃないのな!ツナ、忙しいんじゃねーの?」
「今、一段落したから顔だけでも出しておこうかな、って」
「そうか。ありがとな!」

顔色はいつも通りだが少し酔っているのかいつもよりスキンシップの激しい山本はそのまま綱吉の大人になっても小さい身体をギュッと抱きしめた。
慌てて近くに居る部下が近寄り山本からビール缶を取り上げる。

「や、山本!?」
「ツナに祝って貰えるなんて嬉しいのな!」

「今日はツナ忙しくて会えないと思ってたから余計に嬉しいのな」と山本はニコニコ笑いながら綱吉の髪の毛をぐしゃぐしゃとかき混ぜる。
山本だししょうがないか、と綱吉は諦め半分で優しく微笑んでそれを甘受した。
そんな微笑ましい直属の上司と憧れのトップの仲良し場面を見ていた周囲の柔らかい空気が一転し一気に緊張が走る。
それをいち早く察した山本が部下の視線の集中する先に瞳を走らせる。

「!?」
「……山本、どうしたの?」

山本の胸元に頭を抱え込まれた状態の綱吉はそれらの情報がシャットダウンされていたため、気付くのが一瞬遅れる。

「ツナ、ちょっとごめんな」
「なに?」

そう言うのと同時に綱吉を抱えた山本が後ろに大きく跳躍した。
絶妙のタイミングで部下の一人が山本に向かって時雨金時を投げる。
それを山本は片手で受け取る。

「え?何!?敵!?」
「んー……まぁ敵っていえば、そう言えない事もない、のなー」
「それってどういう」
「その人を離していただけませんか、山本武くん」

問いかけた綱吉の言葉に重なるように綱吉にとっても馴染み深い声が静まりかえった室内に響き渡った。

「え?え?骸?」
「骸には招待状出してないのなー」
「えぇ。ですが、その方を返していただきたいなと思いまして」
「オレの誕生日をお祝いしにきてくれたツナを返せって第三者が言うのっておかしいよな?」
「えぇ、そうかもしれませんね」
「お引き取り願いたいのな」
「その人を渡していただけるのなら今すぐにでも叶えて差し上げますよ?」

表面上は丁寧な会話に見えて、ピンと緊張の糸が張り巡らせられたような殺気漂う会話の応酬に周囲が息を飲み込む。

「ちょっと待った!」
「ツナ、どうした?」
「どうしましたか、綱吉くん?」
「骸、オマエなんでここに?」
「嫌な予感がしたもので」
「嫌な予感?」
「えぇ…思った通りでしたよ」
「失礼な事言わないで欲しいのなー」
「あぁ!何話してるのか分からないけど!」

「ちょっとごめんね」と山本に断って綱吉は山本から離れ骸と対面する。

「骸!ここは山本の誕生日を祝う場所」
「えぇそのようですね」
「祝う気がない奴は出ていけ」
「君も一緒であれば今すぐにでも」
「オレはもう少しお祝いしたいから出ていかないよ」
「それでも」
「でも、じゃない。オマエは帰れ」

誕生日の主役である山本をどこまでも立てようとする綱吉を骸は悔しそうに唇を噛みしめながら睨み付ける。

「はい。そんな目で見ない」
「……」
「山本のことも睨まない」
「………」
「オレに用事があるなら部屋で待ってて?あと1時間くらいで戻るから」
「……ですが」
「ほら、帰る!」

強く言い切った綱吉に言い返す事が出来ず骸は「ちっ」と舌打ちをすると踵を返す。
「大人しく待ってるんだぞー!」とその背中に言葉を投げかけ、骸が大人しく扉を閉めたのを見守った綱吉は山本の方に向き直る。

「山本、ごめんね」
「うーん、ツナが謝る事じゃないのなー」
「みんな、雰囲気悪くしてごめんね!続きやろ!」

はいはい、と手を打つ綱吉とどこか勝ち誇った笑みを浮かべる自分たちの上司の雨の守護者と霧の守護者が出ていった扉の3箇所をその場に居た人たちは代わる代わる見つめ、そっと目配せをしあうと複雑そうなため息をついた。

(初稿2010.05.01)
骸と山本がこんな関係だとハゲ萌えます