NOTICE


綱吉はすっかり見慣れてしまった光景をなんとも言えない気持ちで見つめていた。
そして半分諦めながら、目の前の人物に声を掛けた。

「お寛ぎ中大変申し訳ないんですが……そろそろソレ仕舞っていい?」
「まだ肌寒い日も続きますし、ダメです」

きっぱりと骸は言い切る。
こたつに長い身体をすっぽりと収めうつぶせで冊子をめくりながら。
その姿に綱吉はこめかみを押さえた。

「オレがこのスペース作った時に馬鹿にしてたのってどこのどなたでしたっけ?」
「あぁそんな事もありましたね」

綱吉の苦言をモノともせず骸は受け流す。
昨年末に綱吉は10年来の付き合いとなる気まぐれな雲の守護者の先輩に「イタリアで畳を取り扱っている業者」を教えて貰い、渡伊してからの悲願であった私室に畳スペースを叶えた。
だだっ広くて落ち着かないフローリングの空間の隅に4畳半の小上がりを作り、そこに日本から取り寄せたこたつを設置して日々の激務を癒すための空間を作り満足していた綱吉を、目の前の男は馬鹿にしていたはずだ。
それが今ではどうだ?
仲間の待つ自宅には戻らず綱吉の部屋に入り浸り、すっかりこたつが定位置となっている。

「もうさ、4月半分過ぎたし、さすがに仕舞いたいんだけど……」
「ダメ、です」

熱いなら電源入れなければいいんですよ、とこたつの存在意義を疑うような発言をしつつ「それよりも、綱吉くん」と骸は綱吉を手招きする。

「何?」

近寄る綱吉に、骸は布団を持ち上げ自分の隣の空間をバシバシと叩き入れと無言で強要する。
六道骸とこたつという似合わない2つに改めて目眩を覚えながらも綱吉は大人しく骸の隣にスルッと入り込んだ。
素直な綱吉に骸が笑顔で頷く。

「で、何見てたの?」
「そろそろ母の日じゃないですか」

骸がサッとみかんを差し出すのを綱吉は条件反射的に口を開けて甘受した。
もぐもぐと咀嚼しながら骸の手元の冊子を一緒に覗き込む。

「母の日プレゼント特集……?」
「えぇ。千種に日本から取り寄せてもらいました」
「でもおまえ……」
「勿論奈々さんにですよ」

決まってるじゃないですか?と至極当然な事のようにキョトンとした表情で骸は綱吉を見返した。
その骸の表情に「いや、ちょっと待てよ。オレの母さんとオマエいつの間にそんな親しくなったんだよ!」と綱吉はもっともな突っ込みを入れた。
それに骸は更に不思議そうな表情を浮かべる。

「日本での任務を受ける度に君の自宅にお邪魔して食事を振る舞っていただいていましたが?」
「ちょっと、何勝手に人の家でくつろいでるんだよ!」
「え?僕だけじゃなくて守護者全員がご招待していただいていると思いますよ?」
「え?何だよそれ!?」

骸からの突然の告白に綱吉は混乱する。
自分ですら帰っていない日本の自宅に何故他人である守護者の面々が帰ってるんだよ!と思うが驚きのあまり口をパクパクとする事しかできない綱吉を骸が面白そうな表情を浮かべ見返した。

「君、アホな魚みたいな表情してますよ?」
「いや、誰でも、そうなるよね?なんで息子が数年帰ってない自宅に息子以外の奴らが帰ってるんだよ!」
「なんでも何も…何故か日本に行くと君の母親から連絡が入るんですよ。不思議ですよね」
「母さんがオマエの連絡先知ってる事の方が不思議だよ!」

すっかりこたつから上半身を起こして荒ぶる綱吉を骸は微笑みかける。

「だって、交換しましたから」
「意味分からないんだけど!」

それ以前にオレ、オマエの連絡先知らないんだけど!いやそれはどうでもいいけどさ!と何を言っているか本人も分からない状態で綱吉は声を張り上げる。
ある程度騒いで落ち着いた所を見計らって骸が「ケータイ番号教えましょうか?」と声をかけた。

「……いや、いらない」
「ほら。君は何度言ってもそう答えるじゃないですか?」

クフフと面白そうに声を上げて笑った骸はふと表情を改めた。

「まぁそんな訳で奈々さんに何らかの形でお礼をしたいんですよ」
「うん、深くは考えたくないから、分かったことにしとくよ」
「で、息子としてはどれがいいと思いますか?」

諦めてその場に突っ伏した綱吉に骸が隣から声をかける。
そして片手をあげてヒラヒラと振りながら「母さんならなんでも喜んでくれるよ」と素っ気なく答える。

「それは分かりますよ。だけどやはりどうせなら喜んでいただきたいじゃないですか?」
「うん…そうだね……」
「息子の君があげたら喜ぶと思いますよ?名前だけ連名にして差し上げますからちょっとは一緒に考えてくださいよ」
「うん……そうだね……」
「息子とその恋人からのプレゼント、奈々さん喜んでいただけると嬉しいですね」
「うん……そうだね……!?は!?」
「花は定番として何かそれにプラスしたいですよねぇ」
「ちょっと待てオマエ今聞き捨てならないこと言わなかったか!?」
「花は定番?」
「違うよ!もっと前だよ!」
「喜んでいただけると嬉しいですね?」
「オマエわざと言ってるだろ!」
「あぁ、息子とその恋人?」
「それだよ!!!!」

突っ伏していた状態から再度身体を起こし顔を真っ赤にして綱吉は怒鳴る。
「そんな至近距離で怒鳴らなくても…」と骸は顔を顰めた。

「オマエ、母さんに何か言ったのか!?」
「えぇ。綱吉くんとお付き合いさせていただいていま」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

骸の言葉を途中で遮った綱吉は絶望の雄叫びを上げた。

「オマエ、本当に言ったのか!?」
「えぇ。やはり息子さんの貞操を奪った身としては挨拶しておいたほ」
「うわぁぁぁぁぁ!誰か夢だって言ってくれ!!」
「夢でも別にいいんですが、言ってしまったものはもう消せませんからねぇ」

それよりも奈々さんは料理がお好きなようですしエプロンとか喜びますかね?それともバッグの方が?と楽しそうに冊子を指さす骸の声がは綱吉に届く事は無かった。

(通りで母さんから孫がみたいって話し聞かなくなったはずだよ!!!!)

(2010/04/19)
こたつに入ってのんびりする話が書きたかったはずなのに……