桜咲く


「受かったー!」

並盛中の校舎に沢田綱吉の声が響き渡った。

「おめでとうございます!10代目なら楽勝だと思っていました!」
「ツナ、これで春からもまた一緒なのな!」

その声に綱吉の周囲にいた獄寺と山本が言葉を返す。

「とっとと報告してきて10代目合格おめでとうパーティしましょう!」
「お、それいいのな。親父に頼んで寿司握って貰うぜ」
「うわ、ホント?4月からも2人と一緒で本当に嬉しいよ!」

ぎゃーぎゃーと中学生らしく大騒ぎしながら廊下を早足で駆ける3人の前に学ランを着た人物が立ちふさがった。
突如現れたその人影に一段と大きな声を上げながら3人は団子状に足を止める。

「ひ、ヒバリさん……」
「オマエ、なんでここにいるんだよ!?」

臨戦状態になる獄寺を宥めながら綱吉が一歩前へ足を踏み出し、今にも飛び出そうな獄寺を手で制しながら雲雀に近づく。
そして元先輩で、現在進行形で綱吉の守護者である雲雀に出来る限りの、若干引きつってしまっているのはどうしようもない、笑顔をむける。

「お久しぶりです。ヒバリさんがここに来るなんて珍しいですね……どうしたんですか?」
「綱吉、高校に受かったみたいだね。おめでとう」
「あ、ありがとうございます!」

予想もしていなかった雲雀からの言葉に綱吉は目を見張る。
そして先ほどの無理矢理作った笑顔とは違う本当の笑顔を浮かべた。

「まさかヒバリさんがわざわざお祝いに来てくれるなんて思ってなかったんで嬉しいです!」
「うん。これで4月から同じ高校だね」
「……えっ?」
「………えっ?」

雲雀の言葉に綱吉が笑顔を凍り付かせて首を傾げる。
その綱吉の仕草に雲雀も真似するかのように首を傾げる。
その様子を傍観していた獄寺が勝ち誇ったかのように高笑いをあげた。

「オマエ、もしかして聞いてなかったのか?10代目は1年間勉学に励まれて並盛市立高校に合格されたんだよ」
「………」
「あ、うん、そうなんです。並高受ける予定だったんですけど……優秀な家庭教師のおかげで予想外の高校に受かっちゃいました」
「オレも野球推薦で市立行くのなー!」
「オレは当然10代目とご一緒させていただくし、確か芝生頭もボクシング部があるから市立にいるな」

それぞれの言葉を聞いた雲雀が何を言われているのか分からないという表情で、彼にしては珍しくポカンと口を開く。
現実を受け入れられないでいる雲雀の後方からスラッとしたシルエットがもの凄い勢いで飛び出てきて、綱吉に縋り付く。

「ひぃっ」
「つ、綱吉くん!今の、言葉は、本当ですか!?」
「む、骸……オマエ、ここで何してるんだよ?」
「そんな事より!君が受かった高校の名前をもう一度言いなさい!」

「10代目から離れろ!」と叫ぶ獄寺と笑顔でバットを手にする山本をまるっきり眼中に入れず、骸は必死に綱吉の肩を前後に揺さぶる。
自慢の美形が情けないほど歪んでいるのを綱吉は近距離から微妙な気持ちで見つめる。

「だから並盛市立高校に合格した、よ?」
「並盛高校ではなく?」
「うん、市立」

先ほどの雲雀と同じような口を半開きにした表情で骸が固まる。
気持悪いなぁと思いながら綱吉はその隙に掴まれた肩を解放させ、骸から一歩後退し距離を置いた。

「ふ、二人ともどうしたんですか?固まっちゃって……」
「ど、どうして……」
「ん?」
「「どうして並盛高校じゃないんだ!!」」

「君の頭では並盛高校にしか行けないとアルコバレーノに聞いたから制服が気に入らない高校に我慢して入ったというのに!」とガクッと廊下に膝をつき頭を垂れながら骸が呟く。
その後方では雲雀が「何のためにあの高校の風紀を整えたのかと……」と呆然と呟いている。

「……進学予定の高校さえなくなればいいんですよね?」
「わお。君、たまにはいいこと言うね」
「ここは仕方ありません。雲雀恭弥、共同戦線と行きましょうか」
「不本意だけど仕方ないね」
「では」

綱吉の目の前で不穏な密約が交わされ、キリッと表情を整えた二人が立ち上がり駆け出す。
その後ろ姿に綱吉は一抹の不安を感じずにはいられない。

「じゅ、10代目……とりあえず職員室に報告に行きましょうか」
「う、うん」
「なんかあいつら嫌な事言ってた気がするのなー」
「山本!口に出したら本当になりそうだからダメ!」

3人は目配せをし、何も聞いてなかったよなと頷きあった。








桜咲く4月。
並盛高校の校門に複雑そうな表情の綱吉を満足そうな笑顔を浮かべる風紀委員長と生徒会長が出迎えていた。

「「ようこそ、並盛高校へ」」
「オレがなんのために必死で1年間勉強したと思ってるんだよ…!これを避けるためだったんだよ!!」

新入生の大きな叫び声が並盛高校に響き渡り、校舎にいる生徒の涙を誘った。

(2010/03/26)
こんな感じのどうでもよい三つ巴が好きです。