夢で逢いましょう Side:HT


柔らかに自分を受け止めてくれる大きなダブルベッドで眠りについていた綱吉はギシッと自分の背後でマットが少し軋んだ事に気付いた。
その次の瞬間には綱吉は暖かく柔らかい世界から一転、冷たい外気にさらされた現実世界へと引き戻された。
更に腰を乱暴に掴まれ、フワッなんて優しい感覚とは縁遠い暴力的な勢いで身体が沈み込んだベッドからはがされる。

「……ヒバリさん、寒いです」

突然の来訪者、雲雀に荷物のように担がれた状態で綱吉は無駄と分かりつつも些細な抵抗を試みる。
綱吉の言葉にクスッと雲雀は少しだけ笑う。

(あ、機嫌が、いい)

「少しの間の我慢だよ、綱吉」
「……寒いです」
「もう一度目を閉じればすぐ、だよ」

全く綱吉の意見を受け入れるつもりは微塵も見せない雲雀はそのまま綱吉の部屋を出ると、音もなく廊下を闊歩する。
すっかり静まりかえったボンゴレの並盛町の地下アジト内には雲雀と担がれた綱吉以外に人影がない。

「せっかく大きいベッドにしてるんですからオレのベッドにヒバリさんが大人しく……」
「……なに?」
「いえ、なんでもありません!」
「うん。分かればいいんだよ」

僕は物わかりの良い子は好きだよ。
そう言いながらやはりクスッと微かに笑う。

「ヒバリさん、何か良いことあったんですか?」
「どうしてそう思うの?」
「なんとなく、です」
「相変わらず君の超直感は良く働くんだね」

(いえ、超直感とかじゃなくて、10年も一緒にいればそれくらい分かります)

その言葉を綱吉はグッと飲み込んだ。
雲雀は綱吉を担いだまま、不可侵条約によって固く閉ざされた二つの建物の間の扉をいとも簡単に開ける。
そしてそのまま綱吉を自分のテリトリー内に連れ込む。

「……いつもは入って来るなって言うのに、ずるいです」
「僕は自分の持ち物しかテリトリー内に入れたくないんだよ。君の所には人が多すぎる。いつでもぞろぞろと人が入って来るなんて考えただけでゾッとするよ」
「オレだけでもいつでも入れるようにしてくれればいいのに」
「別にそうしてもいいけど、君の自称右腕や親友が絶対に自分たちの権利も求めてくるだろ。それが面倒だ」

君以外には興味ないからね。
睦言のように雲雀が囁く。
乱暴に扱われているようでその実、丁寧に運ばれているらしく、お腹から伝わる雲雀のぬくもりと、振動の極力排除された上下運動に綱吉は少しずつ眠気を思い出し始める。

「眠いの?」
「そりゃ……寝てる最中でしたから……」
「そう。じゃあ寝ていいよ。きちんと責任を持って布団にまでは運んであげるから」
「……は、い……」
「おやすみ、綱吉」

雲雀の言葉と共に、綱吉はそのまま眠りの世界へと意識を手放した。

(2010/02/02)
お気に入りは自分の巣に持ち帰る雲雀氏は可愛いと思います。