近い未来の僕たちへ


「あ、沢田さん!」
「ツナだー!」
「ツナ−!こっちこっち!」

ボンゴレが極秘裏に運営資金を出費しているという孤児院の門をくぐった瞬間、庭で遊んでいた子供たちが目聡く綱吉の姿を認め、口々にそのあだ名を呼びながら駆け寄ってくるのを骸は一歩引いた場所から腕組みをして見つめていた。
泥だらけの子供たちが飛びついてくるのを止めもせず一人一人の名前を呼び返してやりながら満面の笑みで優しく抱きしめてやる綱吉の相変わらずの甘さにもやっとした少しの嫉妬心を覚えた自分に気付いた骸はイラッとする。

(子供相手に…何を嫉妬してるんですかね。情けない)

通常綱吉がここに来る時は嵐か雨の守護者を護衛にするため、骸がこの場に足を踏み入れたのは初めてだった。
そのため綱吉に群がる子供という図も初めて見るもので、子供を相手に慣れた様子で好意を振りまく姿に思わずため息をつく。
そして先に用事のあるという館に入る、と綱吉に告げようとした所で自分を凝視する視線に気付いた。
クルッと辺りを見渡した後ふと下げた視線の先に、自分の腰元までしかない幼い少女が骸をジーッと音がしそうな程見つめていた。
「……なんですか?」
「………!ロクドウムクロっ!!」

骸が視線を合わせ声を掛けた途端、少女は目を見開き骸の名前を呼んだ。
そしてキラキラと骸にとって眩しすぎる視線を向け、首を思いっきり上に向け骸を見続ける。
視線を逸らすわけにもいかず仕方なく骸は問いかける。

「何故、僕の名を?」
「あのねあのね!ツナがね、ムクロはとってもキレイなんだよ、って!」
「……え?」

骸の困惑を余所に少女はキラキラした瞳で言葉を続ける。

「お目々が赤と青の宝石みたいでキレイなんだよ、って!いつかここに連れて来るからってお約束してたんだー」
「……え、綱吉くんが?」
「ツナヨシクン?」
「あぁ、君の言う『ツナ』ですよ」
「ツナはツナヨシクンなんだ!」
「えぇ、でも綱吉くんと呼んでいいのは僕だけですよ」
「ふぅーん?」

少女は幼い仕草で首を傾げる。
そして再度、どこか綱吉に似た大きな茶色の瞳で骸を射貫くように見つめ、破顔した。

「ムクロは、男の人なのに本当にキレイだね!ツナが言ってた通り、本当に王子様みたい!!」
「…それも綱吉くん…ツナが?」
「うん!」

少女が元気に頷いた所で骸の後方から綱吉の慌てた声が近づいてきた。

「うわわわわ!!それは言わない約束でしょ!」
「えー、だって。ツナの王子様、本当にキレイなんだもん〜」
「ははははは……よくこのお兄ちゃんが骸だって分かったね」

そう言いながら少女の頭を優しく撫でてやった綱吉は、優しく、しかし有無を言わせない力で背中を押して仲間の方に戻らせる。
「あとで遊んでね!」という少女の背中を見送った綱吉は恐る恐る、骸の方へと肩越しに顔を向けた。

「聞こえた……よね?」
「えぇ。まさか綱吉くんが僕の事を王子様だと思ってくださってるなんて思ってもいませんでしたよ」
「うーわーうーわー!!」
「クフフフ」

骸の言葉を遮るように耳を塞ぎ声を上げる綱吉の幼い行動に骸は声を出して笑う。
居心地の悪そうな顔をした綱吉は視線をうろうろさせながら、言う。

「あのな!この間お土産に持って来た絵本の王子様がオマエに似てて、つい言っちゃっただけで、他意はない!それだけだ!」
「僕が王子なら、君は姫、でしょうかね?」
「あー、オマエ、今の会話まるっとつるっと全部忘れろ!無理なら一回凍らせてショックで忘れさせてやる!」
「怖いボスですねぇ」

慌てる綱吉を全く相手にしない様子で骸は上機嫌な様子で奇妙な笑い声を上げ続ける。
そして「あーもう骸連れて来るんじゃなかった!」と叫ぶ綱吉にそっと近づくと耳元に唇を寄せ、囁いた。

『姫、二人の子供でも作りましょうか?』

不意打ちで鼓膜を震わせた美声に綱吉は顔を染め、更にその言われた内容を把握するとこれ以上ない程顔を真っ赤にした。

「……し、死ねっ!つーか、生物学的に無理だろ!!」

(2009/12/15)
拍手文から派生したネタ、だったりします。