dolce


綱吉はぼんやりと目の前で食事をする骸を見つめた。
細い身体に似合わずガツガツと自分の目の前に並べられた皿を片付けていく骸の姿に綱吉は圧倒される。

「オマエ細いのに結構食べるよな……」
「腹が減っては戦は出来ぬ、ですよ。食べられる時に食べておかないと食いっぱぐれますからね」
「……今は違うだろ」
「まぁそうですね。今は違った意味で…自分の気が向いている時に栄養を取っておかないと数日食事を忘れてしまいますので、というのが本当の所でしょうか」
「……その不健康な生活辞めろってオレ何度も言ってるよな?」

あぁそうでしたっけ。すみません。
ちっとも悪いと思っていない口調で言う間も骸は手を休めず器用に食事を続けている。
育ちはそんなに良くないはずなのに何故か骸の所作には品と色気があるよなぁ、と綱吉は思う。

「あれ…でもオレはオマエのガツガツ食べてる所ばっか見てる気がするんだけど?」
「あぁ……君と一緒に居ると食欲が沸くんですよ。僕が心配なら毎日一緒に居てくだされば解決しますよ?」

クフッと笑いながら言う骸を見ながら綱吉は「そんな事でこいつの生活が改善されるならそれでもいいかもな」と思ったが、それをうっかり口に出してしまわない程には成長していた。

「それにしても君は食べないですよねぇ…だからそんなに貧相なんですよ」
「悪かったな10年経ってもチビのままで!」
「いえ。君はそのくらい小さい方が腕にすっぽり収まってくれるのでちょうど良いです」

ご機嫌の表情で揶揄って笑う骸にムカッときた綱吉はほとんど手を着けていなかった自分の目の前にある皿を掻っ込んだ。

「クフフ…君は小さいままの可愛い君で居てくださいね」
「……絶対大きくなってやる」
「さすがに24歳越えれば縦ではなく横に伸びてしまうでしょうねぇ」

「まぁ僕は例え太った綱吉くんでも愛せますよ」と言葉を続けた骸を、綱吉は肉の塊を租借しながらにらみ返した。
そんな綱吉の視線を全く気にせず、骸はナイフとフォークを思わず綱吉が見とれる程綺麗に使い切り分け口に運ぶ。
骸の大きいが薄い唇に運ばれる肉塊、それを受け入れる為に開かれる口の中と舌の真っ赤な色、租借し飲み込む際の喉の動きという一連の流れを睨みながら見ていた綱吉はカッと目元を真っ赤に染めた。
そして居心地悪そうに目をそらしたのを目聡い骸が指摘する。

「どうしました?」
「……オマエって、食べてる姿色っぽいよな…」
「おや?そそられましたか?」
「そそっ……!」

骸の言葉に目元の赤みを顔全体に広げ葉を失った綱吉を、骸は心底愛しい物を見る優しい瞳で見つめた。

「冗談ですよ。おや?これ、美味しいですよ」
「………よ」
「綱吉くんもこれ食べて見てくださいよ…どうしました?」

俯いたまま顔を上げず、何かを呟いている綱吉の顔を骸は覗き込もうと腰を浮かせた。
それと同時に綱吉が勢いよく顔をあげた。

「あぁそうだよ!食事してるオマエ見て欲情したよ!」
「おやおや……君のそんな素直な言葉が聞けるなんて思ってもいませんでしたよ」
「うっさいな!」
「食欲も性欲も人間の原始的な欲求ですから持ち合わせて当然ですよ」

あーなんでオレこんな事言っちゃってるんだよ!ありえねー!
骸の言葉など聞かず一人恥ずかしさの極致で頭を掻き毟りながら叫び声を上げていたため、綱吉は小声で呟かれた骸の不吉な言葉を聞き逃しその後自分に降りかかる事象を回避する事が出来なく夜中にまた一人で後悔する羽目になるのだった。

「それではありがたく食後のデザートは君とさせていただくとしましょうかね」

(2009/12/12)
綱吉もガツガツ食べる子だと思っております。