1/365日 〜10年後〜


「綱吉くん。綱吉くん」

本日、ボンゴレ本部の屋敷内で珍しい光景が至る所で見られていた。
普段屋敷に現れる事がほとんどない上、ボンゴレ10代目と他の守護者以外の前に姿を現す事は更に稀であり「存在そのものが幻なのでは?」と言われている霧の守護者が朝から屋敷内をうろついている、という光景だ。
しかし、そもそも霧の守護者の顔を知らない構成員の方が圧倒的に多いため、「見知らぬ特上レベルに見目麗しい美青年が10代目の後を親しげについて回っているが、10代目がそれを何一つお咎めしない」というのがそれを見た者達の感想であった。

「骸!お前うらやま……10代目の仕事の邪魔だ!」
「獄寺くん…」

場所を屋敷内から執務室に移した今、骸は綱吉の背後に回りこみおんぶお化けよろしく、背中に張り付いて離れようとしない。
10代目が否定しないなら、オレが口を出すことは許されない。の精神で耐えていた獄寺がついに切れて飛び出した本音だだ漏れの発言に綱吉は白い目を向けた。
骸は我関せずで、獄寺の言葉は聞こえないかのように微動だにもしない。

「10代目も10代目です。どうしていつものように追い返されないんですか?」
「うーん。説明しにくいんだけど…」
「脅されてるとか、何か握られてるとかなら、今すぐそいつを果たします!」
「いや、違うって。今日は…まぁ特別な日だから、いいんだ」
「ですが…」
「10年前からずっと骸と約束している日だから」

だから、こうなってるのは仕方がないんだ。
どうしても休みを取れなかったオレに非はあるし。
そう言いながら、優しく肩に乗る骸の髪の毛を撫でてやる綱吉を見て、獄寺は悔しさと羨ましさと敗北感とで震えだす。
ふと綱吉の肩から顔を上げた骸がそんな獄寺に向かって、声を出さずに口だけ動かした。

『ざまあみろ。コレは僕のだ』
「〜〜〜〜っ!」

男前の顔を盛大に歪めた獄寺が「失礼します」と部屋から飛び出していくのを見ながら、綱吉は溜息をついた。

「骸、これで満足なの?」
「えぇ。今日は僕が、僕だけが綱吉くんに甘えていい日なんですから邪魔者はいりません」
「……お前、本当に歪んでるなぁ」

綱吉は苦笑しながら頭をポンポンと叩く。

「仕事片付けたらいくらでも構ってやるから、ちょっとソファにでも座って待ってて」
「嫌です。離れたくないです」
「…はっきり言って、邪魔だから、離れろ」
「優しくしてください」
「だから後でしてやるから!」

綱吉はポンポンと叩いていた手を止め、頭を引き離そうと手で押す。
と、抵抗されると思っていたものがあっさりと離れていった。
真正面から骸が綱吉の瞳を真っ直ぐに見つめる。

「綱吉くん。好きです」
「はいはい」
「愛してます」
「はいはい、ありがとう」
「……好き、です」
「オレも骸のこと好きだよ」


10年後もきっとそれは変わらない

(2009.4.19)
ほのぼの……しようとして道を踏み外しました。