!Una que manana agradable es hoy!


ある穏やかな朝のお話。



「…沢田綱吉、朝ですよ。起きなさい」

今やすっかり生徒の身長を追い越して、赤ん坊から立派な少年へと成長したボンゴレ10代目の家庭教師の先生がある日唐突に
「毎朝ボスを起こすのは守護者の仕事にするぞ」
と言い放った。
そしてその瞬間、そのルールは誰にも破る事の出来ない絶対のものとなった。

(なんて忌々しい…)

マフィアとの馴れ合いなど全く望んでいない骸にとって、この寝汚いマフィアのボスを起こすという仕事は茶番以外の何物でもなかった。
わざわざこのためだけに、自分が生活しているわけでもないボンゴレの本拠地に朝から足を伸ばす、なんて労力の無駄遣いもよいところだ。

(こんな仕事はやりたい人間に任せておけばいい)

例えば、右腕を名乗る忠犬や腹黒い親友など、に。
彼らなら喜んでこの職務を全うするだろう。

「起きてください。今日は朝から会合があるのでは?」
「んー………も、う少しだけ………」
「起きてください。」
「んー………………起き、るよ…………」

返答はあれど一向に起きる気配のない綱吉に痺れを切らした骸は、幸せそうに閉じられている目じりをそっと指の腹で撫で耳元に薄い唇を近づけ、囁いた。

「おはようございます、綱吉くん。起きないのであればお目覚めのキスをして差し上げますよ」
「!?お、起きました!今、もう、思いっきりばっちり起きました!!」

先ほどまでの安穏とした幸せの時間から一気に現実世界に引き戻され覚醒した綱吉を見やり、骸は薄い笑みを浮かべる。

「おや、それは残念ですね。お目覚めのキスはいかがですか?」
「いえ、もう、全然足りてますので結構です!お気を遣わずに!」

あたふたとした様子で慌ててベッドから飛び出す姿は、巨大マフィアのトップには到底見えない。
守護者以外の、ボンゴレ10代目に心酔し切っている部下たちがこれを見たらどう思う事か。

(あぁ、なるほど。だからアルコバレーノはこの仕事を末端の者たちにはさせないのかもしれませんね)

クフフフフ。
思わず漏れた骸の笑い声に、シャワールームへと向かいかけていた綱吉が立ち止まり振り替える。

「オマエ…今日は随分機嫌がいいな?」
「そう、ですか?でも確かに今日は気分がいいかもしれないですね」

そんな事よりも早く準備をしないとアルコバレーノに怒られますよ。
アルコバレーノ、の名前に肩を震わせた綱吉は慌てて扉の向こうへと消えていった。
それを見届けた骸は綱吉の部屋を後にした。



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今日はこの後も仕事があるので、仕方なく骸が執務室に顔を出すと室内には雲の守護者以外がそろっていた。
そして何やら綱吉の話をしているようだった。

「お。今日は六道の日だったのだな!」

誰に対しても分け隔てなく接する晴の守護者は、適度な距離を置いて接する分には骸は嫌いではなかった。

「えぇ。そろそろ来るのではないでしょうか?」
「そうか!ところで六道が起こす時も沢田は」
「そうですね。あの寝汚さはどうにかしないと、そのうち暗殺されますよ」

晴の守護者の言葉を遮った骸の発言に、その場に居た全員の動きが停止する。

(おや?何かおかしな事を言いましたか?)

「え?10代目、寝て、らっしゃるのか?」
「起きない……?」
「えぇ。いつも暫くの間ぐずぐずしてますよ。相変わらずですね」

骸の発言に目の前の嵐の守護者の表情が凍りつく。
雨の守護者もかろうじて笑顔を留めているが目の奥は真剣そのものだ。

「どうしましたか?」
「あのな、今俺たちが話してたのってな、」
「10代目はすっかり立派になられて、俺たちの気配を感じ取ってノックする前には必ず目を覚ましてらっしゃる」
「って事、なのな」
「沢田は極限に目を覚ましてるぞ!」
「ボンゴレは朝から笑顔で挨拶してくれます」
「え…?」

他の守護者の言葉を骸は反芻する。
つまり、沢田綱吉は自分以外の人物が起こしに行くときには部屋に入る前から気付き目を覚ましている。
自分の時だけ、いつまでも寝て、いる…?
………まさか、自分に対してだけ安心しきって、いる………?

その瞬間、何があっても冷静沈着で表情一つ変えない男の整った顔が一気に朱に染まる。

「10代目に限って、まさか、そんな!!」
「獄寺落ち着けって」

騒ぐ者と顔を真っ赤にし全身の動きが止まった者とで混沌とした空間に、張本人が顔を覗かせる。

「おはよう。…どうしたの?骸、顔真っ赤だけど?」
「10代目!」

綱吉は半泣きで縋り付く右腕の頭を撫でてやりながら骸に視線を送るが、骸は視線を合わす事が出来ず顔をそらした。
今日は長い一日になりそうだ、と骸は咳払いをして心を静めるために必死に別のことを考えるよう努力した。

なんてすばらしい朝だろう!

(2009.2.5)
タイトルお借りしました⇒テオ//Theobald habla su sueno
守護者がこんなに仲良しとかないなー、と思います。