The opportunity of a lifetime


「骸ってキス上手そうだよなぁ」

自室で骸に勉強を教えてもらっていた綱吉は、向かい合って座っている無駄に整った顔を見て何気なくそんな言葉を口に出した。

「は?して欲しいんですか?」

骸は眉間に皺を寄せて正面に座る綱吉の顔を覗き込む。
突然、骸の端整な顔が近づいてきたことに驚いた綱吉は、自分の意志とは関係無しに顔が赤くなるのを感じ慌てて言葉を吐きだす。

「んなわけないだろ!オマエ顔だけはいいから、引く手数多で経験豊富そうというか……」
「はぁ」

慌てる綱吉に冷たい視線を送った骸は興味が無さそうに生返事を返した。
と突然何か良い事を思いついたかの様にニヤッと口の端を吊り上げて笑ったが慌てている綱吉はその表情を見過ごし、そのまま早口で言葉を並べ続ける。

「例えば高校生になって…彼女とか出来たとして、そしたらやっぱり…キスとかするだろ。
下手、かどうかも分からないけど、相手に下手って思われたら何かイヤだなぁ、と。
その点オマエはうまそうだからそんな心配しないでいいんだろうな、と思って。」
「ならば試してみますか?」
「うん、そうだね…って何でそうなるんだよっ!!」

勢いで頷いてしまってから綱吉は大慌てで自分で突っ込みを入れた。
それに対して骸はそれが至極当然の事であるかの様にあっさり言う。

「気になるんでしょ?でしたら自分で確かめるのが一番いいのでは?」

余りにも当然の事の様に言われた綱吉は一瞬納得しかけてしまった。
がすぐに間違いだと気がつく。

「上手そうだなって思っただけで実際にはそんな事別にどっちでもいいんだよ!オマエが上手くても下手でも、俺には全く関係ないし!」
「そうなんですか?だけど気になるんでしょ?」
「あー。もうこの話は忘れてっ!勉強の続きしないとリボーンに怒られちゃうよ!!」

もうこの話は終わり。と言う様に綱吉は目の前の問題集に視線を落とした。
しかし骸的にこの話しは終わってはいなかった。

「そうは言いましても、僕の気分は盛り上がってしまいましたからねぇ…」

骸は綱吉にとって不吉な言葉を呟くと、中腰になってテーブル越しに綱吉の肩を引き寄せる。

「ちょっ、何するんだよっ!」

慌てて抵抗する綱吉を更に強引に引き寄せると、唇を重ねた。

「んっ」

綱吉の口から苦しそうな声が漏れるが骸は唇を離さない。
綱吉の唇の感触をじっくり味わうかの様に、徐々に骸の口付けは深くなって行く。
最初は抵抗していた綱吉も途中から体中の力が抜けてしまい抵抗する事を放棄し骸にされるがままに口付けを甘受していた。


「で、いかがでしたか?」

顔を真っ赤にした綱吉に向かって、骸は勝ち誇った様に聞く。

「…」

綱吉は顔を真っ赤に染めたまま俯く。

「ボンゴレ、いかがでしたか?」

追い打ちをかけるかの様に、耳障りの良いキレイな声音で骸は再度囁く。

「良かった、でしょ?」

自信満々な表情で言う骸を綱吉はチラッと見て呟いた。

「…最悪。オマエ最悪」
「でも良かったんでしょ、綱吉くん?随分、気持ち良さそうでしたよ」
「ホント、オマエ最悪だよっ!!」
「そうですか。僕は自分が上手いのか知りたいので、ボンゴレが分からなかったって言うのならもう1度させていただきたいのですが?」
「もう、いいだろっ!!」

逆ギレする綱吉を見て骸はキレイに微笑む。
そして耳に口を近づけて囁く。

「で、本当のところどうでしたか?」

このままではいつまで経っても平行線のままだと気がついた綱吉は自分が折れる事に決める。

「俺、初めてなんだから、上手いかどうかなんて比較対照がないから分かるわけないだろっ!」

小さな声で、だけど切れた様に言う綱吉を見て骸はますます嬉しそうに微笑む。
そして。
もう1度綱吉を引き寄せるとその唇に軽くキスを落とした。

「ご馳走様でした。
ちなみに今生では初めてですよ、僕も」

骸は自分の唇をペロッと舐めながら、顔を更に真っ赤に染める綱吉に向かってそう言ったのだった。

(2009.02.02)
ちなみにタイトルは直訳すると「一生に一度の機会」。