4.今日は朝から待ち惚け



「あら?骸くん?」

沢田家の玄関前に佇んでいた骸の背後からおっとりとした声がかかる。

「おはようございます」
「おはよう。もしかしてつっくんを待っててくれたの?」
「はい」
「そうなの……ごめんなさいね。つっくん、もう学校行っちゃったのよ」
「そう、ですか」

骸はそう返事をして一つ頷くと、奈々に向かって礼をしながら沢田家を後にする。
奈々に見せた笑顔の裏で、腹の中は煮え返っていた。

(これで、何日目ですか!?温厚な僕でもさすがにそろそろ怒りますよ)

卑屈に笑った骸はそのままクルッと並盛中学の方角へと方向転換をした。


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「あれ?骸何してるんだ?」

校庭で朝練にいそしんでいた山本が他校の制服で堂々と正門を通過した骸をいち早く発見し、声をかけた。
そんな山本に視線を一瞬送った骸はそのまま校舎の方へと歩みを進めながら言う。

「沢田綱吉に用事がありまして」
「ツナに?でもツナ、まだ学校に来てないと思うのなー」
「彼の母親に登校した、と言われましたが」

山本の言葉に足を止め、首を傾げながら骸は呟く。
その言葉を耳に入れた山本は「あぁ」と頷く。

「ツナ、遅刻し過ぎでヒバリの怒りに触れたらしくって今週一週間風紀委員と一緒に並盛商店街の朝清掃してるのなー」
「朝、清掃?」
「地域振興の一種?とか言ってたぜ」
「そう、ですか」

一瞬思案した骸はふむ、と頷くと校舎に向かっていた身体をクルッと回転させ校門の方向へと長い足を動かしさっさと移動する。

「行くのはいいけどヒバリもいるだろうから喧嘩するなよー」
「あっちが喧嘩を売ってこない限りは大丈夫ですよ」
「だったらいいけどな」

山本のニヤッとした笑いを見ることなく骸は並盛中学を後にした。


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「……沢田綱吉はどこですか?」
「ワオ。相変わらず君には常識がないんだね」
「君に常識を語っていただきたくないです」

山本の言葉通りに並盛商店街へとやってきた骸は目的の人物がそこにはおらず、大勢のリーゼントたちに指示を出す学ラン姿の雲雀の姿を確認した骸は雲雀に声をかけた。

「まぁ君に常識があろうとなかろうと僕には関係ないからどうでもいいけどね」
「で、沢田綱吉は?」
「草食動物ならさっきまでゴミ拾いをしてたけど、赤ん坊が用事があるって言って連れて帰ったよ」
「……アルコバレーノが?」
「そう」
「そう、ですが……ありがとうございました」

思案顔で頷きながらその場を後にしようとした骸の目の前で雲雀がトンファーを構える。
骸はそれをチラッと見やった。
二人は数秒視線を交えたが、いつまでも闘志を見せない骸に飽きた雲雀がトンファーをおろす。

「もういい」
「この身体で無用な戦闘は避けたいので助かります」
「ふんっ」

骸の言葉に鼻を鳴らした雲雀は次の瞬間には骸から一切の興味をなくし、リーゼントの少年達の方へと近づいていった。
その後ろ姿を見送った骸はため息を一つつき、首をごきっと鳴らした。

(さて、と。スタート地点に戻りましょうか)


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「あら、骸くん?どうしたの?」

学校、並盛中学と町内1周散歩をしてスタート地点である沢田家へと戻って来た骸を見つけた奈々が朝と同じように声を掛けた。

「綱吉くんが、アルコバ……リボーンと一緒に戻ったと聞いたので」
「あら?そうなの?でもごめんなさいね。つっくんもリボーンくんも戻ってきていないのよ」
「そう、ですか」
「そう言えば骸くんは朝ご飯食べた?」
「いえ……」
「だったら食べながらうちで待てばいいと思うわ。さぁどうぞ」
「………お邪魔、します」

奈々からの突然の言葉に骸は一瞬だけ躊躇したが次の瞬間にはニッコリと人を騙す笑顔を浮かべ、奈々の言葉を受け入れた。

「パンとサラダなんだけどいいかしら?骸くんはコーヒーと紅茶、どっちが好きかしら?」
「コーヒーをお願いします」

そんな他愛のない言葉の応酬をしながら骸は沢田家へと入っていった。


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「……で、オマエ、何してるの?」

夕方、自宅へと戻ってきた綱吉は自室でくつろいでいる骸を確認するとこめかみを押さえながら問いかける。

「お帰りなさい。随分遅かったですね」
「何で、ここに、オマエが、いるの?」
「君の母親が、君を待つなら家で待ちなさいと招いてくださいました」
「母さんは?」
「夕飯の買い出しに」

何でもない事のように言葉をつらつらと返す骸に綱吉は眉間に皺をよせる。

「で、結局オマエはここで何をしてるの?特に用がないならお引き取りいただきたいんだけど……」

ため息とともに吐き出された言葉に骸は内心で激しく憤った。

(一日待たされ続けた僕に対しての言葉がそれですか!)

(2010/04/17)
うまくまとまりませんでした……