3.その無神経に腹が立つ



「で、これは何ですか?」

綱吉に呼び出された骸を待っていたのはテーブルに置かれた紙袋だった。
チラッと中を覗き込むと手紙と思わしきものが詰まっている。

「最初に言っておくけど、オレは断ったんだからな!」
「そんな事はどうでもいいです」

で、これは?
想像はついているが、綱吉の口からきちんと説明をさせたい骸は言葉を促す。

「もう一度お聞きします。これは、何、ですか?」
「……手紙」
「それくらい見れば分かります」
「お、オマエ宛の、手紙…断ったんだぞ!オレはちゃんと断ったんだぞ!だけどオマエが直接受け取ってくれないって無理矢理押しつけられて…一人受け取ったら後から後から渡されて気付いたらこんな量に……」

言ったんだから今すぐこれを持って帰ってくれと言わんばかりの綱吉の態度に骸は綺麗な瞳を歪めた。
そしてその表情を無理矢理歪んだ笑顔に変え自嘲気味に呟く。

「僕の気持ちは君に伝えてあると思いますが」
「あ、う、それは」
「その上でこういう物を受け取ってくるという事は、それが君の返答ということでしょうか?」
「あ、だ、だから…」

言葉を濁しながら視線を漂わせる綱吉に骸は舌打ちをする。
その音にビクッと綱吉は体を強張らせ、恐る恐る骸を見やった。
窺うようなその視線に骸は更に険を深めた。

「分かりました。それは君が責任をもって処分してください」
「でも!」
「君はきちんと渡した。だけど僕が不必要と感じたので処分した。何か問題でも?」
「だってオマエが捨てるのとオレが捨てるのとじゃ違うと思う……」
「僕が受け取るという無駄を省いただけで結果は同じです。君はお気になさらず」
「でも……」

紙袋を手に納得がいかない表情で「でも」「だって」を繰り返す綱吉に痺れを切らした骸はため息をつくと、紙袋をその腕から強引に奪い取った。
そして手にした紙袋を汚らわしいものを見るような冷たい視線で見つめる。と、同時にどこからか青い炎が発生し一瞬でそれを灰へと変貌させた。
突然の一連の出来事に綱吉は目を見開く。

「これで、問題は何もありませんよね?」

もうここに用はない、と全てに対して興味を失った骸の瞳が何よりも雄弁にそう語る。
その冷めた視線に見つめられ綱吉の大きな瞳が水分を孕む。身動き一つ、瞬き一つでこぼれ落ちそうなそれを骸は見下ろす。

「僕の加虐心を煽りたいんですか?」
「違っ…どうしてそんな酷い事出来るんだ?」
「酷い事?」
「せっかくオマエの事を好きだって言って一生懸命手紙を書いてくれた子たちの気持ちを見ることもなく燃やすなんて酷いよ……」
「酷い?」
「だって気持ちを無視されたら…誰だって悲しいだろ!」
「ほぅ……それを僕の気持ちを見て見ぬ振りをする君が言うのですか?」
「あっ」

自分の失言に気付いた綱吉が慌てて口に手をあて塞ぐ。
それを見ていた骸がスーッと目を細め、口の端を微かに上げ、シニカルな表情を浮かべる。

「誰だって悲しい、ですか。僕も君に無視されて悲しい、ですよ?」
「あっ、ごめ」
「謝るんですか?それは僕の気持ちは受け取れないという事に対しての謝罪ですか?」
「あ、それは」

一歩一歩詰め寄る骸から逃れるためじりじりと後退していた綱吉の体がトンッと壁に当たる。
次の瞬間、綱吉の体を壁と己の間に閉じ込めるように骸が両腕を壁に押し当てる。
バンッという音が綱吉の耳に反響する。

「僕だって一応傷つくんですよ?」
「あっ、うっ」
「君のこういう鈍い所は正直反吐が出そうになるほど嫌いです」
「あ……」
「そうやってすぐに泣くところもむかつきます。言葉を濁して誤魔化してその場しのぎをしようとするところも心底腹正しいです」

なんで君なんて好きになったんでしょうかね。
そう吐き捨てると骸は立ちすくんでいる綱吉をその場に残し、立ち去った。

(だけど、それでも君に好かれたいと思っている自分が滑稽で、一番嫌いだ!)

(2010/03/14)
自分の感情を整理しきれないツンな骸さま