それでも貴方についていく


「オマエはまだ世界大戦とかしたいと思ってるの?」
「そう、ですね」

静謐で清浄な空気の漂う空間に綱吉と骸の声が響いた。
決して大きな声で話している訳ではないのに、響き渡る。

「オレはオマエの大嫌いなマフィアのボスに、なる」
「えぇ」

綱吉の言葉に何の感慨もないように骸は頷いた。

「オレは…明日この場所でマフィアのボスになる」
「…えぇ」

自分はこの場所になんて似つかわしくない人間なんだ、と思いながら骸は頷く。
そして綱吉はなんてこの場に似合うことか、と更に心の中で骸は思う。

「オマエがマフィアを憎んでいる事は誰よりも知ってる。だけど」

綱吉はそこで言葉を区切り、骸を真正面から見据えた。
死ぬ気の炎は燈っていないのに瞳はその時のそれに酷似している。

「ボンゴレの霧としてではなく。
 ボンゴレ10代目の守護者としてではなく。
 六道骸として、オレの隣に居て欲しい」

覚悟を決めた、人を射抜くような、真っ直ぐな瞳で綱吉は骸を見つめる。

「沢田綱吉に六道骸をください。」

精巧な作りのステンドグラスから差し込む尊い光を背後から浴びた綱吉はなんの迷いもなくそう言い放った。

(なんて、綺麗な人なんでしょうか)

顔の造詣云々ではなく。
魂が、穢れを含んでいない。
明日マフィアのボスになるというのに、この人は。
骸は表情を一切変えることなく、心の中で感嘆した。

「えぇ、いいですよ」

あまりにもあっさりと肯定した骸に、無理を承知で言っている事を自覚していた綱吉が逆に驚く。

「世界大戦とか、もう考えるなって事だぞ」
「えぇ、分かってますよ」
「オマエが憎んでいるマフィアのボスになる男が隣に居ろって言ってるんだぞ」
「承知してますよ」
「マフィアのど真ん中に身を置けって言ってるんだぞ」
「…君も大概しつこいですね」

骸は肩をすくめて苦笑いをした。

「ドン・ボンゴレの君がどうなろうと構いません」
「…うん」
「ボンゴレなんて組織がどうこうしても関与する気はありませんし、滅んでしまえばいいと今でも思ってます」
「…うん」
「でも、君が沢田綱吉であり続ける限り隣に居てあげますよ」
「えっ…」

驚きで目を見開く綱吉に、骸がふわりと微笑む。
綱吉が初めて見る、嘲笑が含まれない綺麗な微笑みを浮かべた骸はそのまま綱吉の目の前まで歩み寄ると跪いた。

「自分で隣に居ろと言い出しながら、何を驚いているんですか?」
「だって、まさか、骸が、」
「知らなかったなんて言わせませんよ」

もう、手遅れです。
骸はそう言うと綱吉の右手をそっと持ち上げる。

「僕は君のモノになってあげます」

骸は持ち上げた綱吉の右手に唇を寄せ、恭しく口付けを落とす。

「神を信じていない男が、神の前で永遠を誓うなんて、なんて滑稽な姿でしょうか」

綱吉の目の前に屈した骸が綺麗に哂った。

死が二人を別つまで、隣に。

(2009.5.3)
カッコイイ骸目指しました!ただの綱吉大好きな骸になりました!