6.死んではいけない、死なせない


「10代目!?」

銃口を敵に向け表情一つ変えず、戸惑い一つ見せずに引き金を引いた綱吉にその場に居た物は一様に戸惑いを覚えた。
マフィアのドンになって数年経つというのに未だ暴力が嫌いで、特に銃という何の実感もなく人を殺める事の出来る道具が苦手でまだ己の拳での戦闘の方が自分の意思でそうしているという気持ちになれるから気が楽だ、というボンゴレ10代目が、なんの躊躇もせずその道具を使い標的を寸分違わぬ正確さで射抜いたからだ。
銃を使わないとマフィア界で密かに有名な綱吉だが、「使わない」だけで「使えない」訳ではないという事はあまり知られていない。
そういう噂が好きな者たちは未だ幼さの残る10代目を揶揄して「銃が使えない」と思い込んでいるが、むしろその反対で実際には天才ヒットマンである家庭教師仕込みの銃の腕はそこら辺の人間では到底太刀打ちできないレベルを誇っている。
そんな銃を使わない綱吉が銃を使った事に部下たちは動揺した。

「武、こっちに。肩を貸して」
『了解』
「隼人、了平さん。引き続き前線を頼みます」
『任せてください』
『承知した』

インカムを通して少し離れた場所に居る3人に綱吉は命令をくだすと、今度は近くに居る部下たちの方に視線をやる。

「みんな、後は頼んだよ」

綱吉の凛とした大きくはないが十分に威厳を含んだ声音に、部下たちは「Si」と返答すると意識を戦いに戻す。
それを見届けた綱吉は足元に倒れこむ人物に合わせて地面に膝を着く。

「…なんで、庇った?」
「君、きちんとした殺意を持って人を撃つのなんて初めてなんじゃないですか?」

抑えた腹部から赤い血液が滴る男を見やって綱吉は眉をひそめた。
夥しい液体の量は命の砂が零れ落ちるかのようで、知らずに焦燥感が綱吉の中に増す。

「な、んで」
「おや、ボスを庇うのは守護者の責務ですよね?」

男は思ってもいないことを、被弾した事を全く感じさせない口調で返す。
二人に山本が近づいてくる。

「クフフフフ、嬉しいですよ。僕のためにその手を汚してくれるなんて」
「…喋るな」
「ようこそ、こちら側へ」

嬉しそうに男が微笑むのを見た綱吉の心がザラッとした感触を覚える。
なんと表現してよいのか分からない感情が綱吉の中に噴出した。

「オレを…オレを殺すのはオマエなんだろ?オマエが先に死んでどうするんだよ?」

綱吉が泣きそうな震える声でそう呟くのを、目の前の男は甘やかな瞳で見つめていた。


オマエの生死を握るのはオレだけだ。

(2009.4.25)
骸は死んでません。この話は再挑戦したいです。