1.勝手にいなくならないでください


「骸っ!」

ボンゴレ10代目の執務室にひょっこり顔を出した霧の守護者を認識するや否や、綱吉は勢い良く立ち上がり傍に駆け寄った。
常ならぬその様子に、さすがの骸もたじろぐ。

「どうしたんですか、綱吉くん?」
「オマエ、3週間も連絡なしでどこ行ってたんだよ!」

大きな茶色の瞳に真剣さを乗せて骸を射るように見つめる綱吉の迫力に、骸が一歩後退する。
それにあわせて綱吉が一歩骸側に踏み込む。

「何してたんだよ?」
「えっと…」
「今、特にオマエに頼んでることなかったよな?」
「えぇ…」
「オレ言ったよな。勝手にいなくなるな、って」

1ヶ月ほど前に綱吉に言われた事を反芻した骸は素直に頷く。
そして「そんなに僕と離れたくないんですね!」という歓喜が湧き上がってきた瞬間、目の前の本人によってそれは叩き潰された。

「オマエが勝手に長期間居なくなると必ずどっかでマフィアが殲滅されてるから、本当に嫌なんだよ!」

なんだかんだでボンゴレも被害被って本部に請求書の山がくるし!
今回は何した!?
どこのマフィア殲滅してきた!?
ボンゴレには影響しないよな!?

矢継ぎ早に捲くし立てる綱吉を前に、骸の表情が暗くなっていく。
そしてついにその口からクフフフフ、と不気味な笑い声が漏れてきたことで興奮気味だった綱吉が我に返る。

(さすがに、言い過ぎた…?)

「と、とりあえず無事でよかった、よ」
「他に言う事は?」
「おかえりなさい…?」
「一つ勘違いなさっているようですから言っておきますが、今回はアルコバレーノからの任務に当たってましたよ。ご存知ありませんでしたか?」
「あ、はい、ご存知ありませんでした」
「まったく…本当に君はダメツナのままですね。報告書、アルコバレーノに渡しておいてくださいね」
「あ、ホント、ごめん。オレが悪かった」
「別にいいですよ」

クルッと踵を返した骸の若干寂しそうな後姿に綱吉は声をかける。

「でも…勝手にいなくなるなってのは本心だからな!」

オマエすぐに連絡取れなくなるし、大怪我するとかあまり考えられないけどそれでもやっぱり心配だし。
捲くし立てるように言い訳を並べる綱吉に、骸は片手一つを上げて応え部屋から出て行った。

(あー!だって何て言えばいいんだよ!今更心配だから連絡してくださいなんて骸に対して言えるかよ!)

素直じゃないのはお互い様。

(2009.3.22)
誰かが背中を押してあげないと一生くっつきそうにない意地っ張りな二人が好きです。