■鈴木→炎27←69/現代/骸がストーカーで鈴木さんの怒りに触れる捏造甚だしい話
■6927/現代/綱吉が寝違えてる話話
■69→27/学パロ/生徒会長骸先輩と後輩ツナくん
■6927+リボーン/10年後/ツナ様が強かな甘めの話
■69→27←59/10年後/骸と獄寺の共闘頭脳戦を書こうとして挫折した話
■69→←27/10年後/純情骸くんの初恋の話
■6927/現代/「自室」「赤面」「お姫様抱っこ」「お互いに同意の上でのキス」のお題小ネタ
■6927/10年後/骸誕生日ボツネタのウエディングドレスを着る骸の話※骸が女装しています
■6927/10年後/未来編終了後直後の魔法使い骸の話
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「そっそーだエンマ君。ちょっと手ーかして」
「?」
通学途中の道で可愛らしく話をしながら歩く綱吉と炎真を怪しい人影が陰湿な瞳で見つめていた。
(それは誰ですか、沢田綱吉!)
今にも飛びださん表情で骸がギリッと歯ぎしりをする。
「…じゃあ」
「うん」
そう言って手の甲を触れ合わす二人を影から見ていた骸は目を見開く。
(僕でさえ繋いだ事がない沢田綱吉の手に触れるなんて許し難い行為ですよ!)
そして飛び出そうとした瞬間、骸の肩が叩かれた。
チッと舌打ちしながら骸が振り向いた瞬間その頬に鉄製の武器が掠める。
間一髪の所で骸は後方に飛びながら、その一撃を回避した。
「粛として清まりなさい」
「……なんですか、君は?」
骸の目の前にスタイル抜群の制服の女性が仁王立ちしていた。
その騒がしい一撃で骸に気がついた綱吉が叫び声をあげる。
「骸!オマエ何してるんだよ!?」
「おや、おはようございます、沢田綱吉」
「……アーデルハイト?」
綱吉の隣で炎真が呟きながら首を傾げる。
その声に、アーデルハイトと呼ばれた女性が視線を向けた。
「この男は風紀を乱していた」
「そう、なんだ……」
「骸!オマエ、本当に何してたんだよ!」
「失礼な!何もしてませんよ!」
「この男は朝から君達をいやらしい視線でみていた」
「骸!」
「失礼な!僕が見ていたのは沢田綱吉だけで、そっちのちんけな子なんて見ていませっ」
骸が全てを言う前にアーデルハイトの円柱蹴りが骸の後頭部に綺麗に入った。
蹴りを入れる瞬間に真っ白な下着を目撃してしまった綱吉が顔を真っ赤にする。
「あっ、あっ、」
「……アーデルハイト、見えてるよ」
「小さなことは気にするな」
「…だって」
真っ赤になりながら視線を漂わせる綱吉に、なんでも無いことのように炎真は言った。
「あ、う、うん」
「……遅刻するよ」
「あ、うん」
「アーデルハイト、先に行くね」
「遅刻はするな」
「うん」
頷くとタタッと早足でその場を後にした炎真の後ろ姿と自慢の房がしんなりとしてしまった後頭部を
抱えてしゃがみ込む骸をしばらく交互に見ていた綱吉は、一つ頷くとアーデルハイトに一礼をする。
「そいつを頼みます」
「頼まれた。少年、遅刻するな」
「はい!」
「さ、沢田綱吉…!?」
骸の悲痛な叫びを華麗に無視した綱吉はもう一度小さく頭を下げると「エンマ君待って!」と炎真の後を追い、駆け出す。
「綱吉くん…!」
「貴様の相手はこの私だ」
そう言うとアーデルハイトは扇子を両手に戦闘態勢を取る。
「風紀を乱す者は許さない」
「……どこかの誰かと被って、非常に不愉快ですね」
かろうじて表情を改めて言うが、後頭部を押さえながら、更に涙目の骸の台詞は端から見るとただの強がりにしか見えなかった。
(2010.04.13)
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「クハッ、相変わらず間抜けですね!」
「……うっさいよ」
寝違えて首が回らなくなった綱吉は楽しそうに人を小馬鹿にして笑う骸をジトッと見返した。
首が動かせないため視線だけを骸に向けている。
その表情がよほど面白かったのか、骸は愉快そうな表情を深くした。
「アルコバレーノとあんなに激しい修行をしているのに、寝違えたとは。なんと惰弱な!クハハ」
「………そんなに笑うなら、その間抜けなオレを見なくていいように出てってよ」
「こんな面白い君を近くで笑わないでどうするっていうんですか!」
「……出てけ」
「嫌ですよ。せっかく君のうるさい家族が全部居ないなんていうおあつらえ向きな日だというのに、なんで出て行かないといけないんですか!」
仁王立ちして宣言する男に、綱吉は冷たい視線を送る。
「あ、分かってると思うけどさ。オレこんな状態だから、オマエの期待しているような事何も出来ないから」
「……はぁ?」
「寝返り打つのも辛いんだから当たり前だろ?客用の布団あるからそれ引いて寝ろよ」
「はぁ!?」
ビシッと言い切った綱吉の言葉に骸は瞠目する。
「恋人同士が、他の邪魔もないというのに何で別々に寝るなんてあり得ません!」
「…別に一緒に寝てもいいけど、オマエそしたら絶対に我慢しないだろ」
「当然です。どこに我慢する必要があるんですか?」
「……だからだよ」
とにかくオマエは下で寝ろよ!ベッドに入ってくるの禁止!オレに触るの禁止!!
そう高らかに宣言された骸はがっくりと項垂れ「くそっ寝違え風情が…!」と意味不明な言葉を吐いて綱吉に生ぬるい視線で見つめられるのだった。
(2010.05.10)
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『沢田綱吉様
お話がありますので本日16時に中庭に来てください。』
名前の書かれていない手紙を受け取った綱吉は期待と不安の入り交じる気持ちを抱えて放課後を待った。
いたずらかもしれない。
いや、もしかしたら生まれて初めての告白を受けるかもしれない。
そんな事を考えていたためいつも以上に授業に身が入らなかった。
時間ぴったりに指定の場所に行こうとした綱吉だったが、運悪く担任に捕まり成績の事でぐちゃぐちゃと文句をつけられてしまったため数分遅れて指定の場所に到着した。
ら、先客が居た。
「お呼び出ししてすみませんでした……」
集会の度に聞く良い声が綱吉の耳に入ってきた。
(うわ、生徒会長…!)
聞いちゃまずいだろうと思いながらも興味と驚きで綱吉の足はその場に凍り付いた。
「お呼び出しした時点で気付かれているかとは思いますが…僕は君の事が好きです。出来ましたら付き合ってください」
直球ドストレートの見本のような告白の言葉が綱吉の耳に響く。
(これだけ顔がよくて、頭もよくて、生徒会長やってるくらい人望も厚い人でも自分から告白するんだなぁ)
女性が放っておかないから告白され放題だろうと思えるほどの人物が自分で告白するという場面に遭遇して驚いた綱吉はぽかんと口を開けたあと、気付かれる前に逃げないと!と我に返ってそっと後ずさりを始める。
「ねぇ、聞いていますか……沢田綱吉くん?」
そっと見守っていた生徒会長が突如自分の方を向き、更に自分の名前を呼んだ事で綱吉は飛び上がるほど驚いた。
「ひぃっ」
「あの……僕の話、聞いてましたか?」
自分を凝視してくる左右色違いの宝石の様な瞳に凍り付いていた綱吉は人ごとのように
(この人こんなに綺麗な顔して女に不自由しなそうなのに……ホモなんだ。可哀想……)
と考えて必死に現実から逃げようとした。
(2010.05.11)
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「あ、骸、待って!」
綱吉はそう言うと自分に背中を向けていた骸の尻尾のように揺れる髪の毛を引っ張った。
「あのね、君、何度言えば分かるんですか?これは別に君が引っ張るためのものじゃな」
文句を言いつつ振り向いた骸のネクタイが強く引かれ体勢を崩した所で頬に暖かいモノが触れる。
「任務、よろしくな」
「つ、綱吉くん!?」
「続きは帰ってきてから、な」
対外時のポーカーフェイスを大きく崩した骸が頬を押さえながら必死にこくこくと頷くのを、綱吉は微妙な気持ちで見つめていた。
……心の中は罪悪感でいっぱいだった。
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「綱吉くん、戻りましたよ!」
クハッと楽しそうな笑い声と共に骸が執務室へと飛び込んだ。
「……3日。本当にやりやがったな」
「オレの勝ちだよ、先生」
そんな骸にチラッと視線を送った師弟はそんな会話を交わす。
「つ、綱吉くん?」
「オマエ何したんだよ?骸に割り振った任務どんなに早くても1週間はかかるはずだろ?」
「ちょっと、ドーピングを、ね」
リボーン別にそれをルール違反にしてなかったから。
そう言いながら綱吉はしたたかに笑う。
一人、会話に追いつけない骸が目をぱちくりと見開き、師弟を交互に見やる。
「先生、オレの勝ち」
「ちっ。しょーがねーな」
じゃ、良い休日を!
リボーンはそう言うと少年らしからぬニヒルな笑いを浮かべながら出て行く。
骸とすれ違い様「オマエ、本当にツナに骨抜きなんだな。情けねーな」とニヤッと笑いながら呟く。
「なっ!」
「じゃーね、せんせー」
憤慨する骸とにこやかに挨拶をする綱吉が執務室に残された。
「まさか本当に勝てるとは思わなかったよ……骸ってもしかして本当にオレのこと好きだったりするの?」
「なっ…なっ……」
怒りと屈辱でうち震える骸に綱吉は近づくとたきつけた時と同様にネクタイを引いて顔を寄せ、今度は唇に自分のそれを重ねた。
「久しぶりの休み貰えたから、ちょっとした意地悪は許してよ」
そう言いながら微笑まれたら、骸に勝つすべはなかった。
(2010.05.12)
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「――ということで、報告は以上です」
「うん、ありがとう」
骸から任務の報告書を受け取った綱吉は頷きながらその文書に目を通す。
「やっぱり……もう、ダメかな?」
「少し調べただけでも真っ黒ですから。子飼いしている意味はないどころかマイナスじゃないでしょうかね」
「そうだよね……」
数ページめくった所で綱吉は自分を納得させるかのように頷いた。
「じゃあ、骸の考えたこれ採用、で」
「承知しました」
「骸のところだけじゃ難しいよね?」
「えぇ…そうですね。同時に叩きたいのでもう一人くらい指揮を取れる人間がいるに越したことはないでしょうね」
「了解」
綱吉は承諾すると執務机に置いてある電話の受話器を持ち上げどこかにつないだ。
「隼人?ちょっとお願いしたい事があるからきてくれる?」
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「こちらが調査結果です」
どうぞ、と骸が差し出した報告書を獄寺は無言で頷きながら受け取りペラペラと捲りながら軽く目を通す。
報告書を持っていない方の手は目の前に置いたラップトップを操作し続けている。
「あとは表の関係者リストを作りたいと思いますのでそちらの潜入に少々時間をいただきたいと思っています」
「それって、これで代用出来ないか?」
クルッとラップトップのディスプレイを骸の方へ回しながら獄寺は言う。
画面を覗き込んだ骸はさーっと目を通し、頷いた。
「えぇ。これで充分です」
視線は報告書に固定されている獄寺は「短期間でよくこれだけ調べたな」と素直に感嘆の声を上げるが骸は「たいした事ないですよ」と答える。
骸の目はラップトップの画面を追い続け、一点で視線の移動が止まった。
「この人物……使えますね」
「弱みでも握ってるのか?」
「えぇ、ちょっとばかり、ね。誰にでも触られたら痛い部分はあるものでしょう?」
(こいつ、相変わらず性格に問題はあるけど人の弱みを握ったり潜入捜査が得意だな。今のところは10代目を裏切る事もなさそうだし……使えるな)
クフッと笑った骸を見ながら獄寺はそう判断する。
そして報告書にざっと目を通し終わり、頭の中で報告書と骸の作戦を感嘆にまとめる。
「直近の出入港リストは今すぐ手配出来るからこっちで用意する」
必要だろ?と獄寺は顔をあげ、骸を見ながら言った。
骸は瞠目しながら頷く。
「そうですね、助かります」
「後でリスト送る……使い捨てでもなんでもいいからメールアドレス教えろ」
「了解です」
(右腕を自負するだけありますね…一言えば十伝わる。判断能力と把握能力の高さは評価に値しますね。ボンゴレの犬……便利な男だ)
眼を細めながら、骸は獄寺をそう評価した。
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「い、命だけは、頼む!」
「君のような価値のない男でも殺すなとうちのボスに言われてますからご安心ください」
目の前でみっともなく喚く男を汚いモノを見る瞳で骸は見下ろした。
命を取られる事はないと知った男が軽蔑の瞳に気付かず、欲を見せる。
「わかった、オマエのボスよりも金を出そう!幾ら出せばこっちにくるんだ?言い値を払おう」
「クハッ……下世話過ぎて話すのも嫌になりますよ。噂に違わぬ小者ですね」
「なっ、なにを…!」
クハッと骸は綺麗な顔に貼り付けた笑顔で笑う。
そこで携帯が震えながら着信を知らせたため、胸元から携帯を取出し通話状態にする。
「はい、……えぇ、えぇ………ありがとうございます」
短い通話を終え、取出した時と同じように胸元に携帯を仕舞う。
そしてツカツカと部屋のテレビに近づくと電源を入れた。
「……?」
「おやおや。あなた有名人みたいですね」
そう言われた男がテレビに目を向け、血走った目を最大限まで見開いた。
そこには男の写真が映し出され、有名なニュースキャスターが淡々と男のスキャンダルについて原稿を読み上げている。
「せっかく政界デビューを目指していたのに残念でしたねぇ……もう二度と表舞台に立てませんね」
「貴様……何をした!?」
「いえ、僕は何もしていませんよ?」
クフフと骸は楽しそうに口を歪める。
「貴様なんて…オレに手を出した事を後悔させてやる!」
「本当にどこまでも予想に違わぬ三流な台詞をありがとうございます」
「そもそもオマエはどこのファミリーだ!?」
「あぁ…自己紹介がまだでしたね。僕はボンゴレの霧の守護者、ですよ」
以後お見知りおきを。以後があればですが。
そう言いながら微笑んだ骸に対して、男の顔は白を通り越して土気色になる。
口をぱくぱくと魚のように開閉するが、声が出ない男を見て骸は首を傾げた。
「おや?先ほどまでの勢いはどこに行きましたか?」
「た、たのむ……命だけは……」
「おやおや。ですから、うちのボス……ボンゴレデーチモには命は取らずに連れてこいと命令されていますからそこは遵守しますよ?」
「命は、とりません」と骸は綺麗な顔か一切の感情をなくし人形のように微笑んだ。
その表情に男は背筋をぞっと凍らせた。
「なんでも言う!なんでも言うから…!」
「おやおや……では、色々と教えていただきましょうか?」
見るものを恐怖に陥れる微笑みを、骸は浮かべた。
(2010.05.16)
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(うわっ……)
視界の片隅で美麗な顔にスッと朱を差しパッと目を逸らした己の霧の守護者に綱吉は瞠目した。
ここ数日、六道骸がおかしい。
目を逸らしたら負けだと言わんばかりに綺麗な色違いの瞳で感情一つ覗かせず人を凝視し、顔色を変える事なくなんでもそつなくこなし、笑う時は人を小馬鹿にしたような冷笑しか浮かべなかった骸が、今のように目があったかと思うと顔を朱に染めてわざとらしく目を逸らしたり、時折誰も見ていないであろうタイミングでほっこりを花が開くように柔らかく笑うようになった。
確実に良い変化であるので「おかしい」という言葉で片付けるのは忍びないが…それでも10年間彼を見てきたものとしては違和感を覚えざるを得ない。
(うっわっ…!)
計らずとも骸を凝視してしまっていた綱吉の視線に気付いた骸がそっと綱吉に視線を移し、その視線が交差すると、やっと色をなくした白くて滑らかな肌を再度赤くし慌てて視線を綱吉から逸らした。
その一連の動作に思わずつられた綱吉も自分の意志を派関係なく頬を赤くした。
(なんか、なんか、この反応って…!)
「……お前達、気持悪いぞ。20をとっくに越えたおっさん二人が何やってるんだ?」
「いや、オレ、まだ24歳だし!」
「……そこは論点ではないかと」
居心地の悪い空気にいたたまれさを感じたリボーンの言葉に二人が言葉を返す。
「本当に胸くそ悪い奴らだな!」
「だって……なんか、今更過ぎてさぁ」
綱吉はチラチラっと骸に視線を送る。
そんな視線に気付いたのか骸は大きな身体を所在なさげに縮め、言った。
「いえ、あの……初恋なんで………」
自覚した途端どうしていいのか分からなくなったんです。
やれ世界大戦だ、やれ六道輪廻だ、やれマフィアの殲滅だと口を開けば言っていた人物と同じ人間か、これが。とリボーンは薄気味悪い気持ちで頬を赤らめる美青年に冷ややかな視線を送った。
(2010.05.19)
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「あ、あのさ…やっぱり、やめない?」
「嫌です」
綱吉の自室で骸と綱吉は至近距離で見つめ合っていた。
至近距離というか、綱吉の居る場所は骸の腕の中だったりする。
綱吉はいったんは合意したものの、実際にやられてみると恥ずかしさのあまり下ろして欲しいと懇願の言葉を繰り返す。
「やっぱり、恥ずかしいからさぁ…」
「君、一度承諾しましたよね?」
「う、うん…」
今の綱吉はいわゆるお姫様抱っこというものを骸にされている状態である。
原因は自室でテレビを一緒に見ていてドラマのワンシーンでつい綱吉が漏らしてしまった一言に起因する。
お姫様抱っこされるヒロインを見ていてついつい「あれって本当に簡単に出来るものなのかなぁ?」と呟いた綱吉に「君が出来るかは分かりませんが…君をだったら、出来ますよ。試してみますか?」と骸が言った言葉からあれよあれよとそんな状況に陥っていた。
「やっぱり君は軽いですね」
「……気にしてるんで言わないで」
「クハッ。気にしてるんならもっと大きくおなりなさい」
「おろせっ!」
バタバタと暴れる綱吉をモノともせず抱えたまま、骸は楽しそうに笑う。
そしてふと真顔になった。
「で、あのドラマではこのあとどうなったんでしたっけ?」
「いや、それは、再現しなくていいから!」
「せっかくですから、とことんリアリティを追求しましょうよ」
骸はそう言うとそのまま頭をついっと下げ、綱吉の唇に自分のそれを軽く触れ合わせる。
「!!!!!!!」
「おやおや…顔が真っ赤ですよ?」
「……あぁぁぁぁ!黙れ!変態!スケベ!」
「その変態でスケベにキスされて嬉しそうな人間も同類なんじゃないですか?」
心底楽しそうに言う骸の後ろ髪を綱吉は悔しそうに思いっきり引っ張った。
(2010.05.25)
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バタン
開いた扉を綱吉は無言で閉じた。
今見たのは幻影だ。と自分に言い聞かせながら。
「オレも疲れてるんだな……そろそろ休みもらわなきゃ」
目を擦り、伸びをしながら扉を背にベッドへと近寄って行こうとする綱吉の背後で扉がこじ開けられる音がした。
「無視をしないでください!」
「あー……やっぱり目の錯覚とかじゃなかったんだ…?」
恐る恐る振り返った綱吉の視線の先には、六道骸が綺麗な顔をして立っていた。
相変わらずほれぼれする程綺麗な顔だよなぁ悔しいよなぁと思う綱吉は、故意に首から下を見ないように顔に意識を集中させていた。
「せっかく長期任務を終えて帰ってきた恋人に対する仕打ちですか!?」
「そっくりそのまま言葉を返してやるよ!日々の激務をこなす恋人に対してこの仕打ちってなんだよ!?」
オマエついに頭まで南国仕様になったのかよ!?
そう言いながら綱吉は骸の首から下に恐る恐る視線を下げる。
そしてやはり見間違えでも、幻影でもなく事実として存在していると認識した。
「失礼な人ですね」
「失礼なのはオマエだよ!なんでウエディングドレスなんて着てるんだよ!?」
「6月と言えば結婚です」
「あーそうですね」
「結婚といえばウエディングドレスです」
「あーそれはそうですね。だけどそれとオマエがどう関係するんだよ」
「君と結婚するためです」
「あーそうですか………はぁ!?」
サラッと流そうとしたのに全く流せない言葉を耳にした綱吉は目をひん剥いて驚いた。
驚愕のあまり表情は固まっている。
「もう一度言います。君と結婚するためです」
「はぁ!?」
「もうかれこれ将来を約束してから10年も経とうというのに君はいっこうに僕との結婚を認めようとしない」
「いや、ちょっと、待って。オレどこから突っ込めばいいのか分からない」
「そこで僕は気付いたんです。君が嫁にきてくれないのなら、いっそ僕が嫁に行けばいいのだ、と」
「え、もうオレにはさっぱり意味が分からないんだけど!」
「ということで綱吉くん。婿役は君に譲ろうと思います。大人しく結婚しろ」
「断る」
綱吉はそう言うと骸が反応するよりも早くその脇をすり抜け廊下へと駆け出た。
命の危機である。人間として、男性としての危機である。
体裁に構っている場合ではなく色々と守るためにはとりあえず逃げることが先決だと気付いた綱吉は炎を灯して全力でスタートダッシュを切り前進した。
「お待ちなさい!」
「そう言われて待つ人がいるかよ!」
もの凄いスピードで移動する綱吉の後方で骸はウエディングドレスをたくし上げヒール、恐ろしい事に10cmヒールを履いている、の靴で全力疾走をしてぴったり10mの距離を保ちながら追いかけてくる。
「怖いから!本当に化け物の類だからお願いやめて!」
「お待ちなさい!逃げるのをやめれば追いかけるのをやめますよ!」
「止まった瞬間にオレの人間としての生命も終了しちゃうよね?!」
「何を言ってるんですか?確かに結婚は墓場とも言いますが、僕と君に限ってそんなはずがあるわけないでしょう」
「あー、もう、ホントに勘弁して!!!!」
深夜の追いかけっこは綱吉が力つきて廊下にポトリと落ちるまで続いた。
(2010.06.13)
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「帰ってきたオレに対してまず言う事がそれかよ?」
綱吉は目の前でいけしゃあしゃあともの凄い事を言ってきた男を睨みつけた。
「当然です」
悪ぶれもせずきっぱりと言い切った男の整った顔を綱吉は奇妙なものを見る目で見返した。
「オレ、さっきまで死んでたの。分かる?」
「それを言うなら僕は最近まで牢獄で水漬けでしたよ」
そんなことよりも綱吉くん!
言おうとしている内容さえ無視すれば綺麗な瞳に真剣な色を乗せたその様はあたかも一世一代の告白をするかのようだ。
言おうとしている内容はどうしようもない、が。
「ヤらせてください!お願いします!」
「情緒もくそもないな!」
「情緒なんてくそくらえです!」
「死の世界から戻った恋人に対する第一声がそれって頭疑いたくなるよ!」
「お帰りなさい無事で何よりですヤらせてください」
「今すぐオレの前から消え失せろ」
「後生ですから…!」
昔からプライドが人一倍高いはずの男が突如綱吉の前でひざを突き、まさかの土下座のポーズを取った。
あまりの出来事に綱吉は呆然とそれを見下ろす。
「え、オマエ、そんなにヤりたいの…?」
「ヤりたいです!」
「そんな当然ですって顔されても…」
「だって考えても見てください!僕はこの身体で君とヤった事がない」
「大きな声で言うな!」
「そりゃ確かに君の初めてもその次も僕がいただいていますよ?でもそれは所詮有幻覚。君は気持ち良くても僕は快感という感覚を幻覚で共有しているだけで、本体としては味わってません!」
「とりあえず黙れ!」
きっぱりと下品な言葉を連呼する骸の口を目の座った綱吉が塞いだ。
「オマエの言い分は分かった」
「では!」
「……オレ疲れてるんだよ。1週間後くらいにまた来て、な」
「酷い!」
はいはい。と綱吉は骸の腕を掴み立たせるとクルッと半回転させ扉の外に押し出した。
「鬼!悪魔!」
「はいはい」
「僕だって男なんですよ!」
「はいはい」
「浮気してやる!」
「浮気したら、オレも浮気するからな」
ヒバリさんにはいつでも嫁においでって言って貰ってるし。
骸の顔が真っ青になるような発言をサラッとした綱吉はそのままバタンと扉を閉ざした。
扉の外で骸が「綱吉くんのばかー!鬼ー!悪魔ー!マフィア−!」と呪詛の言葉を呟くのをそのまま聞きながら「ふーっ」とため息をついた。
「危ない……もう少しで絆されちゃうところだった……」
(2010.06.23)