log05(2010.01〜2010.03)


69→27+ザンザス+スクアーロ/10年後/ザンザスと綱吉のお正月な話
MM→69→27/25歳と14歳/MMちゃんのお話
6927/10年後/クリスマスネタ再利用
69→→→→→←27/3〜4年後/CM見て妄想したよ!な話
6927+山本/10年後/山本と骸が戦う話
69→→→→→→27(+千種)/現代/節分の話(下品)
6927/高校生パラレル/注:ツナが女の子です!
69と27/10年後/ドン・ボンゴレな沢田さんのお話

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「ザンザースさーん」

綱吉が滅多に足を踏み入れないヴァリアーの私室が並ぶ棟に足を運び、更にどうしても外せない用がない限り自分で開けることのないザンザスの私室のドアをノックしながら呼びかける声を聞いて、それぞれの私室に滞在していたヴァリアーの面子は驚きそっとドアを開け廊下をのぞきした。
ザンザスの部屋のドアの前に佇む綱吉の横には服の裾を握られ苦虫を噛み潰した様な顔をしているスクアーロと、それを見守るようにドアの正面の壁に寄りかかる無表情を保つ霧の守護者の姿があった。

「ボス、綱吉が用事あるらしいから、入るぞぉ!」
「ザンザス、お邪魔しまーす」

家主の返答がないのはいつもの事なので気にせず、綱吉をスクアーロはそろって室内に踏み込む。
無意識に綱吉を庇うように半歩前を歩くスクアーロと、無意識に服の袖から二の腕へと触れる位置を変えスクアーロの影に隠れるように続く綱吉を半眼で見つめていた骸が「チッ」と舌を打ち壁から背中を離すとその二人の後へ続き室内へと吸い込まれていくのをヴァリアーの面々は見守り、顔を見合わせ頷くと部屋へと戻った。
触らぬ神に祟りなし、である。

「ほら、綱吉。自分で言え」
「……ザンザス、お願いがあるんだけど」
「………」

ギロッと椅子に座りふんぞり返っていたザンザスが綱吉を睨み付ける。
その足下ではザンザスの匣兵器のベスターが悠然とくつろいでいる。
そんなベスターをチラッと見た綱吉はうん、と一つ頷くと再度ザンザスを見つめて、言った。

「日本には干支っていう習慣…?があるんだけどさ」
「………」
「今年のそれが虎なんだ」
「………」
「だからベスター貸して?」
「………ベスターは虎じゃねぇ!」

カッと目を見開いたザンザスが綱吉の言葉を一喝する。
しかし当のベスターはパタパタと猫のように尻尾を振るとおいでおいでしている綱吉にトトトッと近寄り身体を綱吉の足に擦り付け、更にゴロンと寝転がると腹を出して「撫でて」といわんばかりの態度をとった。

「ベスターっ!」

ザンザスの咆哮も気にする事なくベスターは全面的に綱吉に屈し続ける。
綱吉も慣れたもので床に膝を突くとその腹をワシワシっと撫でてやる。

「本人は良いって言ってるし、貸してね?」
「……カスがッ!」

綱吉とベスターどちらに向かってか分からないがザンザスが吐き捨てる。
それを了承と受け取った綱吉はベスターに「行こうか」と声を掛け、立ち上がらせる。ベスターも非常に従順にそれに従う。
無事に交渉が済んだ事にホッとため息をついた瞬間、ザンザスの手が発光している事に気付いたスクアーロが声をあげた。

「綱吉、逃げろっ!」

それと同時に後ろで大人しく見守っていた骸が綱吉を肩に担ごうと動いたが半歩の差でその役割をベスターに奪われる。
子供を運搬するかのように綱吉の襟首を銜えたベスターが軽々と跳躍し、ドアから廊下へと飛び出した。
してやられた骸はその場で行き場のない手を震わせ唸る。

「虎風情が…!」
「オマエ、綱吉保護しないならこっち押さえるの手伝え!!!」
「………ベスターは虎じゃねぇ!」

(2010.01.02)
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キツメの美人が骸に詰め寄るのを綱吉は「なんか大変そうだなぁ」と人ごとのようにぼーっと見ていた。

「私のライバルが女ですらないってどういう事、骸ちゃん!」
「そう言われましても…僕の好きなのは10年前から綱吉くんなので」
「まだあの薄幸そうなむかつく子雌豚の方が納得いくし、戦い甲斐があるわよ!」

「ライバルが男ってどういう事よ!!キィィィィ!!!」とヒステリックに叫ぶMMを綱吉の隣に座っていたフランが「女のヒステリーは鬱陶しいですねー」と誰に話しかけるでもなく呟く。
そしてわざとらしく耳を手で被い、眉間に皺を寄せた。

「あんなちんけで貧相で乳臭い頼りないガキのどこがいいの!?」

ビシッと綱吉の指さしながらMMは絶叫に近いボリュームで言う。
綱吉は
(怖いからこっち見ないで欲しいなぁ…)
と小さい身体をビクッと震わせながら愛想笑いを浮かべた。

「今は14歳の可愛い綱吉くんですが、10年後はもっと格好良く育ってるんですよ?」
「私が言いたいのはそんな事じゃないの!そもそもあの子、顔も平凡じゃない!!」
「そう言われましても…そもそも僕は綱吉くんの外見ではなく中身に惚れましたので、外見の事を言われてもピンときません」

「勿論可愛らしい外見も更に惚れる要素にはなってますよ?」と骸は綱吉に笑いかけながら歯の浮くような台詞を口にした。
二人の視線が綱吉に向かった事で、綱吉は先ほど以上に引きつった張り付いた愛想笑いを浮かべる。

「綱吉くんも僕の顔ではなく、中身を好いてくださってるんですよね?」
「え?」
「10 年前でもお付き合いしている頃、ですよね?」
「あ、……う、うん。」
「綱吉くんも僕の中身が好きで、両思いなんですよね僕らは」
「あ……」

骸に言われた言葉を反芻した綱吉は、静かに首を横に振った。

「ごめん。オレ、骸の好きな所って顔だけだ」
「つ、綱吉くん!?」
「ちょっと骸ちゃん!こんな子より私の方が数百倍マシだと思うんだけど!!」

「師匠、水牢に戻るとか言い出さないといいんですがー……ボンゴレって見た目と違ってドSですねー」と半眼したフランがボソッと呟いた。

(2010.01.03)
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「エピファーナ?」
「えぇ。1月5日の夜寝る前に靴下をぶら下げておくと、べファーナと呼ばれる優しい魔女がほうきに乗ってやってきて暖炉から家に入ってきて、良い子にはお菓子、悪い子には炭を靴下に入れてくれるというイタリアのお祭りですよ」
「それってサンタクロースじゃないの?」
「イタリアでクリスマスにサンタクロースが来るという風習は比較的最近根付いたもので元々はEpifaniaが主流でした」
「ふーん」

というようなやりとりを綱吉が己の霧の守護者と交わしたのは年を越してすぐの事だった。
イタリアに来て数年が経っているがこの祭の存在を初めて知った綱吉はちょっとした出来心で、5日に眠りにつく前にベッドサイドに右腕に夕方に急遽用意して貰った毛糸の靴下をぶら下げて眠りについた。
ちなみに件の右腕は綱吉が「靴下用意してくれない?」と伝えるとすぐに「Epifania、ですか?」と返してきたのでイタリアで生活していた人間にとっては馴染みの祭というのは本当だったんだ、とその時綱吉はようやく骸の言っていた事を信じたのだった。




そして眠りについて数時間後の深夜3時過ぎ。
綱吉は枕元でもぞもぞという音がするのを聞いてハッと目を覚ましベッドから飛び起き、暗闇に目をこらした。
神経を研ぎ澄ましてみるが…敵というような気配はしない、というかよく知った人物の気配を感じたため若干気を緩める。

「……何してるの?」

骸。と綱吉は暗闇に向かってボソッと呼びかけた。

「………」
「骸、何してるの?人の部屋で、こんな時間に」
「………」
「骸、」
「…… 骸じゃありません。僕はムクロウです」
「は?」

ボソボソと籠もった声で返答がある。
暗闇に慣れてきた綱吉の瞳は、夜にぶらさげた靴下にキレイに収まり、身動きがとれなくなっているフォルムがおかしい真っ白なフクロウが写った。

「………」
「つ、綱吉くん」
「………オレには何も見えない」
「綱吉くん!」
「おやすみ」
「綱吉くん!!」

身動きさえとれなければ悪さされる事もないだろう、と踏んだ綱吉はそのままベッドに逆戻りし一瞬で意識を手放した。
悲痛な声は綺麗さっぱり無視、だ。




翌朝。
敬愛する10代目の枕元の靴下にお菓子を入れようといつもより少し早く寝室を訪れた右腕のこの世の終わりを目撃したかのような絶叫で起こされるまで綱吉は惰眠を貪った。

「……、オマエ、なんでベッドに入り込んでるんだよ?」
「ムクロウから出ればこのくらいお手の物ですよ」
「10代目の貞操がぁ!!!!」
「獄寺くん、貞操大丈夫だから落ち着いてね!」
「クフ、それはどうですかねぇ」
「オマエは黙ってムクロウに戻れ!」

(2010.01.06)
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「綱吉くん」
「ん?」
「君と出会った時からこれを買う事になると思ってました」
「……いや、それは絶対にないと思う」
「えっ!?僕は君を一目見た瞬間から、僕たちはこうなると思ってましたよ!」
「オレたち男同士なんだから、それはおかしいよね!!」
「何もおかしくないです!」
「少なくともオマエの頭はおかしいよ!早くそれ戻してこい!!!」

綱吉の一喝に負けた骸は、手に持っていた結婚雑誌をジトッと湿った視線を綱吉に固定したまま渋々棚に戻した。

「オマエとはどこから会話していいか分からなくなるんだけどさ…とりあえずオレたちの間にそれが必要になることは絶対にないから。それだけは分かれ」
「……この世に絶対なんてないんです」
「はいはい。でも法律上でも無理だし、オレの心情上も無理だし、諦めろ」
「……嫌です!」

日本の法律なんて変えてみせる!と無駄な方向に闘志を燃やす骸を綱吉は遠い目で見つめながらそっとため息をついた。

(つーか、そんな遠回しに色々言う前にもっと、直球で、言ってくれればいいのにな。そしたら、なんか変わるかもしれないのにな)

可哀想な、でも少し愛しいモノを見る目で綱吉はもう一度骸のだいぶ伸びた襟足を見つめ、再度ため息をついた。

(2010.01.14)
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キンッ

一触即発の空気の中、その均衡を崩すように乾いた金属音が響き渡った。
山本からの痛烈な一撃を三叉槍で受け止めた骸は、接近戦は不利と判断し後ろに跳躍する。
それは既に予測済みな山本は骸の着地と共に大きく一歩踏み込み、再度一撃を振り下ろした。
済んでの所で骸は直撃を回避するが、伸ばした髪の一部が犠牲になりハラハラと舞う。

「くっ…」
「やっぱり簡単にはいかないのなー。術師の癖に体術も得意とか本当に反則だと思うのな」

山本の口調は常の彼らしくのんびりしたものであるが、刺すような視線は殺し屋のそれだ。
守備で手一杯になっている骸に山本が再度切り込みをかけ、その秀麗な顔に一筋の赤い線が走ったと思った瞬間、骸の姿自体が霧のように霧散した。

「体術は得意ではありますが、君相手に接近戦をする程僕は愚かじゃありませんよ」
「……術師のそういう所って嫌いなのなー」
「お褒めいただきましてありがとうございます」

背後から余裕の声が響き、山本は一瞬で意識をそちらに切り替えステップを踏むように身体を反転させ骸と対峙する。

「ツナが骸の事は信頼しているみたいだからオレも信じようと思ったんだけど、無理だったわ」
「僕がいつ君に信頼して欲しいと頼みましたか、山本武」
「うん、頼まれてないのなー。だから、ちょっと今回ばかりはオレも許せないなーと思ったのな」

山本はニッコリと微笑むと次の瞬間、再度骸との間合いを詰め骸の手にしていた三叉槍をはじき飛ばし、ピタリと首筋に刀を当て、紙一枚程の距離で止める。

「…… なんで、避けれたのに避けないんだ?」
「綱吉くん、出てらっしゃい」

山本の言葉には応えず、骸が物陰にむかってそう言葉を投げる。
一瞬ではあるが山本の目に同様が走ったのを骸は見逃さなかった。

「君ほどの人間でもやはり戦いに夢中になりすぎると周囲が見えなくなるんですね」
「…ちょっと熱くなりすぎた、かな」

二人の小声のやりとりが聞こえるはずもなく、声を掛けられた綱吉が物陰から飛び出てくる。

「ちょっと、二人とも何やってるんだよ!守護者間での戦闘は禁止にしただろ!!」
「いえ、実戦に向けたちょっとしたシミュレーションにお付き合いいただいただけ、ですよ」
「え?」
「彼ほどの剣術の使い手相手に幻術と体術をどれくらいの割合で混ぜ合わせるのが有効か、をちょっと試させていただいていただけです。ですよね、山本くん」
「…そうなのな」
「え?そうなの?」

心臓に悪いからそういうのやる時はちゃんと声かけてよね!
と骸にくってかかる綱吉の後ろ姿を見て、山本はギュッと強く刀を握りしめた。

(2010.01.30)
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綱吉は目の前に置かれた巨大な筒状の物体と、その物体越しに自分を見ている人物をそっと伺い見た。

「えっと…これは…?」
「恵方巻きです。そんな事も知らないのですか?」
「いや、さすがにそれは分かるよ」

恵方巻きの向こう側に居る骸が首をちょこんと傾げるのを、綱吉は少々げんなりした気持ちで見る。
―――1時間ほど前、帰宅しようとした所に骸の腹心である千種が現れ「ボンゴレ、ごめん」という不吉極まりない言葉と共に流されるように骸たちがねぐらにしている廃墟まで連れてこられてしまい、今この状況に至っている。

「で?」
「食べ物を出されて食べる以外に何かありますか?」
「……どうして、オレがここでこれを食べなきゃいけないのかって聞いてるんだよ!」

かみ合わない会話に痺れを切らした綱吉が若干切れ気味の声を出した。
それに対し骸は「おやおや」と肩を竦め首を左右に振る。
それが様になっている所がまた、綱吉のしゃくに障る。

「食べてください」
「……母さんが同じモノ作って待ってるから、これは骸たちが食べなよ」
「僕たちのは僕たちのであります。これは君用です」
「……まさか骸が作ったの?」
「いえ、千種が作りました」

今日の昼に君の家に習いに行ったそうですよ。
という言葉に綱吉の脳裏に母親と千種がそろってエプロンを着けて一生懸命海苔巻きを作っている姿が浮かび……不覚にもそのほのぼのした光景に笑みがこぼれるが状況を思い出してキリッと顔を戻す。

「……どうかしましたか?」
「いや、何も。とりあえずこれ食べたらオマエは満足して、帰してくれるんだろ?分かったよ」

そう言いながら恵方巻きを手にとってみて、綱吉はギョッとする。
己の知っている恵方巻きよりもそれははるかに巨大だった。
戸惑っている綱吉に気付いた骸は音もなく立ち上がると、容赦なくそれを綱吉の口に突っ込んだ。

「ぐっ…うぐっ……」
「西南西はあちらですよ」

ぐるっと綱吉の方向を強引に変えた骸はそのまま正面から涙目の綱吉を凝視し、うっとりとした表情を浮かべる。

「クハッ、良い顔ですね。確かにこれは福を運んでくれそうです!」

(こいつ、本気で気持悪い…!)

モゴモゴと一生懸命口を動かしながら綱吉は内心でドン引いた。

(2010.02.04)
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(絶対に、言えないよなぁ……)

無意識に下腹部を摩りながら綱吉はため息をついた。
元々生理不順のため数ヶ月単位でこなくても気にしないのが災いし、気付くのが遅れてしまった。
「既に9週目に入っている」との医師の声が綱吉の脳裏にこだまする。
大学進学が決まっており、頭も良く将来を期待されている有能な恋人にそれを伝える事は憚られた。
足手纏いになってしまう。それは、避けたい。
言えない、産めない。産む事にしたとしても、言う事は出来ない。
そうなると自ずと綱吉の選択肢は決まってくる。

(うん、別れよう)

そう決意を再度固めた所で、待ち合わせを時間ちょうどに綱吉の恋人がやってきた。

「お待たせしました。話ってなんですか、綱吉くん?」

優しくニッコリと微笑みながらそう言う骸の瞳を見て綱吉の決意が揺らぎかける。
しかしもう一度お腹を摩ると揺らぎかけた決意を再度固め直し、顔をあげた。

「骸、別れよう」

突然の綱吉の言葉に微笑みを浮かべたまま骸の顔が凍り付いた。
サッと顔色が悪くなり、張り付いた笑顔が美麗な顔を更に際立たせて人形のそれに見せる。
あまりの痛々しさに綱吉は下唇を噛んで耐える。
そうしないと今すぐにでも「嘘。今のは嘘だよ」と叫んでしまいそうだった。

「聞こえなかった?骸、オレたち、別れよう」
「な、んで、ですか?」

すっかり青くなった骸の唇がようやく聞こえる程のボリュームで声となって吐き出された。
痛々しい。

「他に、好きな人でも、出来ましたか?それとも僕の知らないうちに綱吉くんを傷つけてしまうような事をしていましたか?」
「骸は何も悪くないよ。完全にオレの勝手な理由」
「では……認める事は出来ません」
「なんで!?」
「僕は綱吉くんが好きです。愛してます。理由もないのであれば別れる事は出来ません」
「でも、オレは、別れたい」
「……僕の納得のいく答えをいただけるまでは、別れません」

自分に優しい骸のことだからショックを受けても最終的には認めてくれると思ったのに。
綱吉は想像以上に強く拒絶する骸に戸惑いを覚える。

「納得するまで別れません」

相変わらず青い顔をしたまま骸が力強く、言う。
自分の思い通りに事が運ばない事に綱吉はストレスを覚えた。と、同時に吐き気を覚え口を塞いで急いで水道場へと移動し、胃液を吐いた。
慌てて駆け寄ってきた骸が優しく暖かい手で背中をさすってくれる事に何とも言えない安堵を覚える。

「綱吉くん。一つ確認させてください」
「……うん」
「君、最後に生理がきたのはいつ、ですか?」
「2ヶ月、前」
「………すみません、言葉を選ぶ余裕がないんで、正直に答えてください。君、もしかして妊娠して、ますか?」
「………………」
「綱吉、くん」
「……………… うん」

別れよう、と伝えた時よりもよっぽど強い意志が必要だったが綱吉は骸の言葉に頷いた。
綱吉の言葉に骸はその場を後にしようとする。

「え、骸、どこに行くの?」
「即刻学校辞めてきます」
「はっ?」
「そして明日から働ける場所を探してきます」
「え??」
「僕は18歳、君は17歳。日本の法律では全く問題ありません」
「え、なに、が?」
「結婚しましょう。すぐにでも。そして僕の子供を産んでください」
「え、あ、え!?」
「別れるなんて許しません。僕に黙って堕ろすなんて更に許しません。綱吉くん、僕のお嫁さんになってください」


終われ

(2010.02.25)
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激しい銃撃戦のまさに中心で若いマフィア構成員たちが銃を構えながら飛び出るタイミングを計っていた。

「あーあ。ついに10代目にお会い出来ないままになっちゃったなー」
「一度でいいから直参して、直接お言葉いただきたかったな」
「だなー」

死を目の前にしている人間とは思えない程のんびりした口調で言う彼らに、最近入ったばかりの若い構成員が話しかける。

「皆さんは…死ぬのは怖くないんですか?」
「怖くないと言えば嘘になるけど…それでも10代目の為に命を使えると思えば」
「ボンゴレの繁栄に繋がると思えば、な」
「そう…なんですか」
「お前は…不運だったな。まだ入ったばかりでこんな大きな抗争に巻き込まれて。出来るだけギリギリまで飛び出てこなくていいからな。オレたちが出来る限り引きつけるから」
「本当は逃がしてやりたかったんだけどなぁ」
「この状況じゃそうも言ってられないよな」

先輩風を吹かせながら構成員たちが新入りの髪の毛を混ぜながら笑う。

「もし…もし10代目に会えたとしたら、何か言いたい事ってありますか?」
「そうだなぁー…ボンゴレの事をよろしく頼みます、とか」
「お前に言われても困るって。これからもあなたの為に力を尽くさせていただきます、とか?」
「え、オレなら『オレ、頑張ってますから褒めてください』とかだなぁ」
「お前なー」

死を目前にした人間とは思えないほど和気藹々と話をする構成員たちを、若い構成員が優しい瞳で見返し、突如立ち上がった。

「お前、危ないから座れよ!」
「…… ここまでよく頑張ったね」
「はっ?」
「ボンゴレの事は、皆で守っていこう、ね」
「えっ?」
「人のためじゃなくて、自分のために命は使ってね」
「……えっ?」

ポケットから取出した毛糸の手袋をはめながら、若い構成員は今までの口調とは打って変わって年齢にふさわしくない堂々とした態度で構成員たちを見下ろした。

「本当にありがとう。君たちみたいな人に土台を支えてもらってればボンゴレは安泰だと思うよ」
「………?」
「でも、オレにとっては君たちの命の方が組織なんかよりもずっと大事だから。……命は大切にしてね」
「え?」
「これがオレ……沢田綱吉からのお願いです」

ニコッと微笑んだ瞬間、そのイタリア人の若者然とした若い構成員の姿が、ドン・ボンゴレのそれに変わった。
後方に居たはずの別の構成員も姿形が変わり、長身痩躯の三叉槍を持った男の姿にとって変わる。

「オレからの…命令はただ一つ。この場から生きて戻って」
「は、はい!」
「うん。無事に生きて戻れたら本部に遊びに来てね。一緒にご飯を食べて、話をしよう」
「はい!」
「じゃ、健闘を祈る!」
「はい!!」

その返事にドン・ボンゴレは一つ微笑むと後方に控えている青年に「骸、行くよ」と声をかけ、オレンジの眩しい炎を身にまとい文字通り飛び出していった。
ドン・ボンゴレに声をかけられた霧の守護者はため息を一つつくと「最前線に出たがるボスのお守りは大変ですよねぇ……」と呟き、その背中を追いながら駆け抜けていった。
人の目を惹くオレンジの雄大な炎を目で追っていた残された構成員たちは、誰からともなく視線を交わし合い頷くと、生きるための作戦を考え始めた。

(2010.02.28)