log04(2009.10〜2009.12)


スペードとジョット/初代/スペードとジョットの関係を妄想してみた
6927/25歳と14歳/骸、出所祝い小ネタ
6927/10年後/ポッキーの日の話
6927/10年後/綱吉が骸に髪を洗って貰う話
69と27と初代/現代/3人仲良く鍋をつつく話
69→27/25歳と14歳/骸が魔法使いになっちゃいそうだ!大変!って話

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「スペード、スペードぉー」

新興マフィアであるボンゴレの根城としている館にドンと呼ばれる男、ジョットの声が響き渡った。
すれ違う構成員に「スペードを見かけなかったか?」と言葉をかけるが、実体をなかなか見せない霧の守護者の姿を見たという者は中々現れないため、ジョットは休むことなく館内を歩き回る。

「……そろそろ諦めたらどうですか?」
「やっと出てきたか。今回もオレの勝ちだな」
「あなたのしつこさに勝てるとは思っていませんよ。それで、今回は何の用ですか?」

ジョットという男の人の前に立つときの神々しさとは打って変わって私生活時のダメさに辟易しているスペードはため息混じりにそう訪ねる。
(前回探し回された時の理由はなんでしたっけ…)
そうスペードが思ったのと同時にジョットが頼み事を口にした。

「オマエのルーペ貸してくれないか?読みたい書物の文字が小さくて…」
「だから何度アレはルーペではないと言えば分かるんですか!アラウディにでも頼んで老眼鏡でも買って貰いなさい!」
「あれとっても見やすそうなのに、スペードはケチだな」

(2009.10.27)
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「お久しぶりです、沢田綱吉」
「……骸?」

綱吉は目の前に立つ長身の男を見上げながら小首を傾げた。

「……有幻覚、じゃないよね?」
「はい、本物の六道骸、ですよ」

恐る恐る確かめるように言葉を発した綱吉に、骸はにっこりと微笑みながら返答する。

「本当に水牢から解放された、んだ…」
「えぇ。仲間たちのおかげで、無事に」
「そっか…良かった……」

ほにゃと相好を崩した綱吉に、骸は破顔した。

「僕が来たからにはもう大丈夫です。君を守りますよ」
「うん。ありがとう…」

そう言いかけた綱吉は表情をキッと硬くすると声を張り上げた。

「って言いたいけど遅いんだよ!!オマエ間に合ってないじゃんか!!!」
「え?」
「全部片付いたって言ってるんだよ!!貴重な戦力のフランくんまでそっちで奪われてて、大変だったんだからな!」

言外に「オマエ出てこなくてもオマエ以外のメンバーを日本に送り込んでくれてれば問題なかった」と言われていることに気がついた骸は心の中でこっそりと、泣いた。

(2009.11.08)
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「……君は、何をしているんですか?」

執務室に足を踏み入れた骸はソファの上で膝を抱えて座り込んでいる綱吉を見て思わずそう呟いた。

「んー何って、ポッキー食べてるだけだけど」
「……そもそもこの国にはそのお菓子はありません、よね?」
「うん。ハルが日本のお菓子詰め合わせセットを送ってくれたんだー」

いつにも増してほわっとした笑顔を浮かべた綱吉はご機嫌な様子でポッキーを手に持って指揮棒の様に振って遊ぶ。
沢田綱吉という人物には似合う行動だが、『ボンゴレ10代目』の行動としてはふさわしくないなと思った所で骸はため息をついた。

「あ、オマエの好きな日本のチョコもいっぱい入ってたから持っていっていいよー」
「……ありがとうございます」
「で、骸は何しに来たの?」

綱吉は振り回していたポッキーを口に入れるとカリカリと齧歯類の様に食べる。
その様子は膝を抱えているのと相まって小動物にしか見えない。
それを見た骸は2度目のため息をついた。

「山本武から、彼の所の祝勝会に参加した君が相当酔っぱらっていたみたいだったと廊下で聞いたので来たのですが……大丈夫そうですね。僕は帰ります」
「え〜もう帰っちゃうの?」

本当にこの人は酔っぱらうとどうしようもないな!
と骸は諦めにも似た3度目のため息を吐き出した。
そんな骸の様子に気付くこともなく綱吉は袋の中から1本取出すと、先ほどと同様にそれをカリカリと細かくかみ砕き嚥下する。
可愛い反面やたらと色っぽいその一連の動きに思わず視線を奪われた骸は反らすことなく最初から最後までその姿を見つめていた。
もう1本、と手を伸ばし口にくわえた所で綱吉はそんな骸に気がついた。

「どうしたの?……あ、もしかして骸も食べたかったりする?」

もごもごとそう言った綱吉は納得したように頷くと口にくわえたままのそれを骸の方に突きだした。

「どうぞー」

反対側から食べろと言うのか!
と思わず怒鳴りそうになった骸だったが冷静に考え千載一遇のチャンスとばかりにそれに乗ることにする。

「そうですね、ではいただきます」
(綱吉くんを)

骸の心の中の声に綱吉が気付くのはポッキーを食べ終えた骸の唇が自分のそれを重なった後、だった。

(2009.11.14)
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(えっと、なんでこんな事になってるんだろう?)

椅子に座り、自室の洗面台に頭を突っ込みながら綱吉は現状を把握しようと必死に考えた。

「お湯、かけますよ」
「あ、うん」

思考を中断させるかのように骸が声を掛け、適温のシャワーで綱吉の癖毛を濡らしていく。

「熱くないですか?」
「ちょうどいいよ」
「良かったです」

クフっと小さく笑った骸は「では洗いますよ。…お痒いところがあったらおっしゃってください」と言いながら、ご機嫌な様子で綱吉の髪を泡立てていく。
成人男性にしては細く華奢な指の腹を上手く使い、骸は器用に綱吉の髪を洗う。

(うわ…気持ちいい……)

24年生きてもいまだに慣れない「他人に髪の毛を洗ってもらう」という状況、しかもその相手が天下の六道骸だという事実、にありながらも綱吉は素直にその心地よさを満喫する事にする。
綱吉は元来流されやすく、適応能力が人一倍優れていた。

「いかがですか?」
「うん、気持ちいいよ。骸、オマエ本当に器用だなぁ。治るまでずっとお願いしたいくらいだよー」

素直に綱吉が感想を口に出すと、自分の頭を触っている指に動揺が走った。
どうしたんだ?と思い閉じていた瞳をそっと開いた綱吉の目に、顔を真っ赤にし唖然としている六道骸という世にも珍しい光景が映った。

(2009.11.16)
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(なんで、オレはこんなメンツで鍋をつついているんだろ…?)

こたつに入って鍋を食べながら綱吉は自分の隣(位置的には斜め前、だ)と正面に座る2人の人物をそっと見やった。
隣に座る人物。六道骸。マフィア嫌いの、綱吉の霧の守護者。
中身の苛烈さを感じさせない佇まいで綺麗に箸を使ってお上品に食事をしている。食べている物は鍋、ではあるが。
綱吉の視線に気付いて「何か?」という視線を返してくる。
……いつまで経っても何を考えているのか分からず、少し怖い。

(問題は、もう一人の方なんだよな…)

もう一人の方、と綱吉は正面に座る人物を眺めた。
金髪に金色の瞳。そこを除けばパーツは自分にそっくり…だったりするらしい。
20代前半にしか見えないその人は。
綱吉の…何代前か分からないが、とりあえず祖先に当たる人物、らしい。
初代ボンゴレ、ジョット。
それが彼の名前である。
いくら綱吉が勉強が苦手ないわゆるダメツナ、だとしてもこれだけは断言出来る。

(今、この世にいていい人物じゃないよね…!)

「ん?どうした、デーチモ?」
「えっと、……初代、さん?」
「水くさい呼び方はよせ。ジョットと呼ぶが良い」
「じゃあ…ジョット、さん」
「なんだ?」
「どうして、ここにいるんですか?」

綱吉の問い掛けに、黙々と食事をしていた骸が深く頷くのが視界の端に入った。

「そんな事を気にしていては良いボスにはなれないぞ」
「いやいやいや、『そんな事』じゃないですよね!?しかもオレ、ボスになる気なんてありませんから!」
「いや、オマエはボスになる。間違いない」

目の前の自分に似た(と皆に言われるが自分ではあまりそう思えない)人がキッパリと、神のご託のように言い切るのを聞いて綱吉はそっとため息をついた。
ここまで口を開くことなく、隣で沈黙している骸がいっそ不気味に感じられた。

「して、デーチモ。これはどうやって食べるものなんだ?」

よくよく見てみると、初代の皿の中には何も入っておらず食べられた跡もない。

「あぁぁすみません!鍋初めてでしたか?いま、よそいますね!」

先ほどまでの会話の流れから一転綱吉は慌てて皿を受け取ると「これ好きですか?」「これ食べますか?」と訊ねながら甲斐甲斐しく鍋を取り分けてやる。
それを見ていた骸が小さく舌打ちしたのが耳に入ってきたが、聞こえないふりで無視を決め込む。

「はい、どうぞ」
「助かる」

初代に皿を受け渡すと初代はふむふむと頷きながら器用に箸を使い、食べ始める。
一口食べては「おぉ」と無表情を微妙に嬉しそうに変化させる初代は、綱吉から見ても、自分に似ていると言われる人を評価する言葉としては納得いかないが、非常に可愛かった。
そんな綱吉の表情の変化を感じたのか、骸が本日二度目の舌打ちをした。
骸に気を取られてしまっていたため、初代の行動に対しての綱吉の反応が一瞬遅れた。

「あ、初代、それは!」
「……熱い」

大きな固まりで存在していた豆腐を小さくするでもなくそのまま口に運んだ初代が、豆腐の熱さに声をあげたまま固まった。

「ジョット!出しちゃってください!豆腐丸ごとは熱すぎて無理ですよ!」

大慌てで隣に駆け寄り水を差し出しながら「お皿に出して」「大丈夫ですか?」「舌見せてください」とお兄さんもしくは母親のように初代の世話を焼く綱吉の姿についに骸が我慢の限界をむかえた。
豆腐を直接鍋から箸で掴むと口に運ぼうとした。ところで綱吉に見つかり睨み付けられた。

「絶対にそれ食べるなよ!それで火傷してもオレは面倒見てやらないからな!」
「綱吉くんのケチ!なんでせっかく二人で鍋しようと思っていたのに余計な部外者招き入れて、そっちの世話ばかりするんですか!僕の面倒を見なさい!」
「オマエ、本当に面倒くさいよ!」
「デーチモよ…本当にあれが霧の守護者でいいのか?」

初代の言葉は台詞だけを聞くと酷い事を言っているようだが、舌を出しながら少し涙目で言われてもなんの迫力も綱吉には感じられなかった。

(あなたこそ、本当に初代ボンゴレなんですか!?)

「……綱吉くんの先祖じゃなかったら」
「骸。それ以上は言うなよ!」

悔しそうに捨て台詞を吐こうとした骸を綱吉は眼光だけで押しとどめた。

(2009.11.20)
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「綱吉くん…!」

綱吉は突如目の前に現れた男をポカーンとした表情で見上げた。
後方でフゥ太が「ツナ兄…その人…!」と叫んでいるのが耳に入ったが、綱吉の全神経はその男に釘付けだった。

「え…むくろ…?本、物…?」
「えぇ。骸…君から見て10年後の六道骸ですよ、綱吉くん」
「復讐者の牢獄に居るんじゃ…?」
「ご安心ください。裏で少し操作はさせていただきましたが、脱獄ではなく出所ですよ」
「えっと……おめでとう?」
「はい、ありがとうございます」

そう言うと骸はフワッと微笑んだ。
その柔らかい笑顔に綱吉は他のメンバーは別の場所で戦っている真っ最中だ、という事実を一瞬忘れる。
しかし次の骸の言葉で現状を思い出し、気合いを入れ直した。

「今戦闘は僕の弟子に任せているのでしばらくはこちらは安全です」
「あ、はい」
「そこで相談なのですが…アルコバレーノ」
「…なんだ?」
「綱吉くんを…30分…いえ、15分ほどお借り出来ませんか?」
「「は?」」

骸の「相談」を受けたリボーンがいぶかしげな顔をする。
綱吉も突拍子のない言葉に動揺を隠せない。

「なんだ?30分で何かツナに秘策でも教え込んでくれるのか?」
「いいえ違います」
「じゃ、なんだ?」
「たいした事ではないのですが、僕はこのままだと魔法使いになってしまうそうなんですよ」
「「は?」」

二人の想像のはるか斜め上を行く骸の発言に、リボーンと綱吉はそろって首を傾げる。

「いえ、千種から聞いたのですが日本では30歳までに卒業しないと魔法使いになってしまうんですよね?」
「……卒業?魔法使い??」
「ですから」
「ツナ兄、絶対に聞いちゃダメ!ツナ兄が汚れちゃう!」

骸が口を開こうとした瞬間、骸に怯えていたフゥ太が慌てて綱吉に駆け寄り耳を塞ぐ。
ビアンキも後方で女の子たちを守りながら渋い顔で骸を見ていた。
邪魔をされた骸はキレイな顔を歪めながら「ランキング少年、お久しぶりですね」と殺気を押さえることもせずにフゥ太を見返した。
そんな張り詰めた空間の糸を切ったのはスパナだった。

「あ、それ、ウチ知ってる。正一に聞いた」
「スパナ、それは今言っちゃだめ…!」
「30歳まで童貞だと魔法使いになれる日本人はとってもクールだと思う」
「……え?」

綱吉がものすごい勢いで骸を見やると、骸は恥ずかしそうに頬を染め俯いた。
その様子を更に一歩下がった所で見ていたリボーンがボソッと呟く。

「骸、あいつ、早いんだな」

(2009.12.17)