フランくんの師匠が骸と確定したのでこれまでのフランくん関連のログを別途引っこ抜きました。
■6927+フラン/10年後/ただフランくんが書きたかっただけ
■骸とフラン/10年後/「幻覚を見破るのは勘」なんですよな話
■フラン/10年後/ミルフィから師匠を救出するフランくん一人称のお話
■6927+フラン+MM/10年後/MMと骸に嫉妬するツナのお話
■69→27+フラン/10年後よりちょっと前/骸がフランくんを拾ってきた時の話
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「フラン、匿って!」
ボンゴレの屋敷内の一角、ヴァリアーの幹部たちの部屋が並んだ廊下を駆け抜ける綱吉はその勢いのままそのうちの一つの扉をノックしながら叫んだ。
「今日はどっちですかー?先輩?師匠?」
「骸の方!」
「師匠ですかー。面倒ですねー」
「そういわずに頼むよ!面白そうな霧の匣が手に入ったからそれあげるから!」
「オーケーですー」
ガチャ、という音と共に扉が開くとその隙間に綱吉は身体を滑り込ませ間髪いれずに内側から厳重にロックをかけた。
ふー、と溜息をついた綱吉の背後でフランが「お疲れ様でーす」と肩を叩く。
「師匠、どっかに飛ばされてませんでしたっけ?」
「うん、アジアの方に行って貰ってたけどあいつ悔しいけど優秀だから予定かなり縮めて戻ってきやがったんだ…」
「師匠は頭の中身は残念ですが能力的には言う事なしですからね」
「……一応、仮にも、師匠、なんだよね?」
「そうですよー。あの人の能力は認めてますよー。人としてはどうかと思いますが」
「あ、うん、そうだよね」
綱吉はもう一度溜息をつきながらソファに座って、部屋に入ってから初めてきちんとフランの方をむいた。
ヴァリアーの隊服にカエルの被り物という姿を見慣れているせいかラフな格好で髪の毛がそのままの状態のフランは何度見ても綱吉に違和感を覚えさせる。
「あなたも懲りない人ですよねー。そんなに逃げるくらいなら師匠を解任すればいいと思います」
「うーん。フランと同じ理由、だよ。骸の能力は認めてるし、必要だから。…人としてどうかと思う瞬間はそれ以上に多いかもしれないけど」
「そうですねー。あの人のあなたに対する執着心は異常ですよね、変態ですよね」
「うん、否定は出来ないよね」
「ミーが来る前はどうやって対処してたんですか?」
「…スクアーロのところに助けを求めて行くともれなく山本がついてくるからボンゴレが誇る剣豪2人に守ってもらうか、法外な値段を払ってマーモンに頼むかしてました」
「アホのロン毛隊長か前任の人ですかー」
「あ。来たみたいですよ」とフランは扉を指差した。
びくっと綱吉の身体に緊張が走る。
「修行の時でも本気を出してくれない師匠が、あなたが絡んだ時だけ全力を見せてくれるので楽しいですよー。あの人本当に屈折してますよねー」
「…フランがそういう性格で本当に助かってるよ」
いそいそと匣とリングを用意するフランの背中を綱吉は全幅の信頼を寄せる瞳で見つめる。
そこにドンドンとノックする音が響いた。
「フラン、ここを開けなさい。沢田綱吉がここに居るのは分かってるんですよ」
「嫌ですー。」
「…しょうがないですね。僕は疲れてるので今日は極力、力を使わずに綱吉くんを回収したいんですよ」
「それは師匠の事情ですよねー」
「そうですね。だから取引しましょう、フラン。以前君が欲しがっていた6ナンバーのヘルリング。アレと綱吉くんを交換でどうですか?」
「オーケーですー」
「フラン!?」
終われ
(2009.6.26)
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「違いますよ、フラン。それは僕の有幻覚です」
後方から聞こえる骸の声にフランは持っていた匣を下ろし、ため息をついた。
「師匠ー、幻覚を見破るのって難しいですー。ミーには無理ですー」
「おやおや。もう弱音を吐くんですか。本当に君はダメな子供ですね」
そう言いながらクフフフと笑う骸をフランは少し嫌そうな表情を浮かべ見返した。
その視線に気付いた骸は「困った子ですね」と肩を竦める。
「師匠、結局幻覚ってどうやって見破るんですかー?」
もうミーには無理です、教えてくださーい、修行面倒くさいでーす。
言葉を並べ立てるフランを骸は諫めるでも咎めるでもなく、向き合った。
「そうですね…結局は勘、なんですよ。実は」
「……は?」
「幻覚を見破るなんて結局の所スキルというよりは自分の直感に頼る部分が多い、ということです」
「……なんなんですかー、それは?」
「綱吉くんの超直感の話、です。綱吉くんだけは僕の幻覚を見破れるんですよ。勘というよりこれは愛、ですかね」
「は?師匠、正直キモイです」
骸の言葉にフランは盛大に眉をひそめ、非難の声を上げた。
「あなたはなんでもかんでもボンゴレに結びつけ過ぎです。気持悪いです。早くボンゴレもこんな人捨てればいいのになんでいつまでも守護者やらせてるんですかー」
「フラン。怒りますよ?」
「怒ったら、ボンゴレに言いつけるからいいですよー」
べーっと舌を出すフランを骸は大人げなく幻覚の火柱で攻撃する。
しかし、フランはそれを物ともせず消し去る。
「なるほどー、これですねー。分かりました−」
そしておちゃらけた変身のポーズを取ると匣を開匣し、そこに幻覚を混ぜ合わせある造型を作り上げた。
「……綱吉くんっ!」
「……幻覚ですよ−、抱きつかないでくださーい」
(2009.9.8)
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「師匠、今とっても格好悪いですよ−」
白蘭の気配が消えた密閉空間を破った張本人が内部で倒れている人物に向かってそう言葉をかける。
「うわー…ボロボロですねー!グレコくーんは…やはりもうダメそうですね。師匠の人でなしー」
骸の姿を保てなくなったそれは、既に宿主であるレオナルド・リッピことグイドグレコの形状へと戻っていた。
フランはグレコのそばにしゃがみ込むとツンツンとつつく。
「ししょー、居ますかー。ってもう出てっちゃってますよねー。この様子だとしばらく引きこもりですかねー?」
しばらくそうしていたフランだったが、グレコが身動き一つしないのを確認して立ち上がる。
「さて。ミーも見つかると非常にまずいので出て行くとしますかねー。
それにしても師匠全然弱いじゃないですか!きっと今ならミーでも簡単に殺せますよー」
ブツブツと呟いていたフランは室内の1点、普段白蘭が座っている執務机、に一瞬だけではあるが殺意をあらわにした視線を向けた。
「今日の借りは必ず返します」
さてと、とフランは匣を手に持つとかぶり物のカエルを軽く叩き気合いを入れた。
「それにしても本当に師匠はボンゴレのことになると後先考えずに行動しますよねー。あの病気がなければすごい人だと思うんですけどねー」
はぁー、とフランは深いため息をついた。
そして自分で空けた穴を幻覚で修復する。
「1週間持てば気付かれないですかね−。一応念のため2週間コースにしときますかー」
フランは穴が完璧にふさがり何事もなかったかの様な状態へと戻ったのを確認すると、「帰ります−」と誰にでもなく呟き、忽然と姿を消した。
(2009.9.9)
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「骸ちゃーん。久しぶり!」
「MM、お久しぶりです。わざわざご足労をかけましたね」
「何かしこまってるのよー。私と骸ちゃんの仲じゃない!」
クフフと微笑む骸とそんな骸に少し激しめのスキンシップを取っているMMの姿を、綱吉はソファの上で膝を抱えながらじーっと見ていた。
長身でスタイルも顔も良い骸と、スラッとしたキツメだが典型的フランス美人のMMとが並んでいる姿はとても様になっている。
少なくとも背が低い子供、しかも性別は男、の自分に比べれば誰が見ても一目瞭然で「お似合い」と評価される二人だと綱吉は思った。
知らず綱吉の口からため息が出る。
「ボス…大丈夫」
「クローム……」
「骸さまの好きな人は今も昔もボスだけだから」
そんな綱吉の隣に座っていたクロームは綱吉の袖をぎゅっと握ると、小さいがしっかりとした口調で言う。
そして空いている方の手で綱吉の頭をそっと撫でる。
「あっらー。あれって昔骸ちゃんが狙ってたボンゴレの子よね?10年前から来たって本当だったのね。あの頃のままでびっくりしちゃった」
「そうですね」
「それにしても…子供同士仲睦まじくて可愛らしいわねー。骸ちゃんも子供二人抱えて、お父さんとして大変でしょ!」
「いえ、そうでもないですよ。というかですね…綱吉くんとクロームは別にカップルでもなんでもありませんよ」
「え?そうなの?すごくお似合いだし、お互い好意はあるじゃない。可愛らしいカップルだと思ったのにー」
「そうですね。二人ともとっても可愛いですよ」
ただ、綱吉くんは僕のものなんです。
骸はそう言うとMMにニッコリと笑いかけるとクルッと背中を向け、綱吉のもとに近づいていく。
「綱吉くん。不安にさせてしまってすみませんね」
「……むくろ?」
「MMは昔からの……仲間、ですよ。僕の好きな人は今も昔も綱吉くんだけです」
「ほらね、ボス」
「クロームもありがとうございました」
「いえ、骸さま」
骸が穏やかに微笑みながら膝を抱えたままの綱吉をふわっと抱きしめたのを目撃し、MMは目を見張った。
「え!?嘘!?骸ちゃん、いつからショタコンになったの!?」
「失礼ですね。ショタコンじゃありませんよ」
「そうですよ。ただの変態でーす」
「フラン!」
終われ
(2009.9.17)
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「ろっくどーさーん」
遊びましょう。
と続きそうな勢いで、綱吉は六道骸の滞在している部屋の扉を無遠慮に開けた。
扉の一番近くに居た千種がペコリと頭を下げる。
「千種さん、お久しぶりです」
「久しぶり。…どうしたの?」
「骸がまた一人子供を拾ってきたって聞いて」
「あぁ…奥で特訓してる」
「特訓?」
「霧の素質があるらしい」
「え!それすごい!!」
「ボス」「うさぎちゃん」と近寄ってきたクロームと犬に満面の笑みで挨拶をした綱吉は千種の指し示した奥の扉まで進んでいきノックした。
中から聞こえていた騒音が止み、扉の向こうに静寂が訪れる。
「…誰ですか?」
「オレ。拾ってきた子見せて−」
「綱吉くん!」
一言目の冷たさとは打って変わり、弾んだ声になった骸が扉を開け綱吉に飛びつかん勢いで出てくる。
「どうしたんですか?」
「六道さん家にまた子供が増えたって聞いて。会わせてよ」
「…あぁ、なるほど。フラン、出てらっしゃい」
骸の呼ぶ声に応えるように、暗い部屋から少年が一人とことこと出てくる。
緑の髪に、緑の瞳。ガリガリと言って良いほど細い発育不全気味の体。
ぎょろっとしたエメラルドグリーンの瞳が綱吉を凝視する。
「初めまして、フラン、くん?」
「…はじめまして」
「オレは沢田綱吉って言います。うん、可愛いね」
綱吉はそう言うとニッコリ微笑み、フランの髪の毛をぐちゃぐちゃと優しくかき回す。
フランは突然微笑みかけられた事に驚き目を見張るが、優しい手の感触に目を伏せ頬をサッと染め上げた。
「か、可愛い−!この反応、新鮮!!」
「綱吉くん!」
今にも抱きしめそうな綱吉に骸が悲鳴に似た声を上げ、制止する。
「邪魔すんなよ」という視線で綱吉は骸を見やる。
「久しぶりに会う僕には何もないのですか?」
「…お帰り。フランくんって霧属性なの?」
「それだけですか!?」
「……お疲れ様。で、フランくんって」
「………えぇ、そうですよ。霧、です」
「そっか」
じゃ、これは君にあげるよ。
綱吉はそう言うとおもむろにポケットから何かを取出し、フランに差し出す。
「綱吉くん!それって」
「うん。ヘルリング」
「な、な、な」
「雲雀さんが見つけてきたけど『僕には必要ない』ってくれたから、骸にあげようかなぁと思って持ってきたんだけどフランくんがあまりに可愛いからお近づきの印にあげようかな、って」
事も無げに綱吉はそう言い、へらっと笑う。
わなわなと震える骸のことは綺麗に無視した綱吉は、そのままフランに向き合う。
「はい、どうぞ」
「……これ、ミーに?」
「うん。危ないリングみたいだから、一応骸の指示に従ってね。でも、これは君のだよ」
「ミーに、くれるんですか?」
「うん。君にあげるよ」
小さい小さいと揶揄される綱吉よりも更に小さいフランの瞳を覗き込むように膝を曲げた綱吉は、視線を合わせ安心させるように微笑んだ。
その優しい温かい微笑みを正面から受けたフランは更に顔を真っ赤にし、所在なさげに視線を漂わせる。
「ようこそ、ボンゴレに。何か困った事があったら遠慮しないでオレに言ってね」
「あなたは、何なんですか?」
「オレ?オレは一応骸の上司だよ」
「師匠の上司……ボンゴレ、10代目ですかー!?」
「うん。肩書きはそうなってるね」
マフィアのボスらしからぬ笑みを浮かべる綱吉を、フランはぎょっとして見つめる。
「骸にいじめられたらすぐに相談してね」
はい、とフランは小さな声で呟き、手のひらに落とされたリングを大切そうにぎゅっと握りしめた。
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「ししょー」
「……なんですか、フラン」
「今、ボンゴレに初めて会った時のこと思い出しました−」
「……それは良かったですね」
「ボンゴレってやっぱり可愛いですよねー」
近くに居るとぽかぽかしますー。というフランの言葉にクロームがうんうんと頷く。
「言っておきますが、綱吉くんは僕のですからね。彼は誰にでも甘いだけであって、君を特別扱いしている訳ではありませんよ」
「それでもいいですー。ししょーと同レベルって事ですよね?」
フランの言葉に骸がギリッと奥歯を噛む。
「ミー、出来ればボンゴレのために働きたいですー」
「……分かりました。善処しましょう」
後日、骸の指示に従いとある場所に出向くとどこからか現れた剣を振り回す剣を振り回す声の大きい銀髪ロン毛男と「シシシ」と変な笑い声を上げナイフを投げる金髪ティアラ男の二人組に捕獲され、連行され、いつの間にかとある部隊に所属する事になるなど、この時のフランは考えても居なかった。
(2009.9.30)